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第18話 ロックドラゴン

ついにロックドラゴン(ストーンアリゲーター)と対峙します。

「さて、ここまで来たら目的地まではもう近いわよ」


 エリの言葉に俺は頷いた。

 地面から岩がごつごつとむき出していて、周辺には大きな木も見当たらなく、所々に背の低い草やコケが生えているような場所だった。


 昼食を取ってからしばらく歩いてきたが、サラマンダー以外に魔獣が見当たらない。

 サラマンダーを狩るのにも飽きてきたなと思いつつも、条件反射的に剣を振ってしまう。もはや作業と化した動作をこなしていく。


「あの先よ。この前ストーンアリゲーターが討伐されたのは」


 エリが指で指している方向を見てみると、山肌からそびえ立っている大きな岩が見えた。


「じゃあそこまで行ってみるか」


 俺が先頭に立って歩き始めたとき、強い魔獣の気配を感じた。


「なんだ、この感じは?」


 目の先の大きな岩の向こう側から、さらに大きな岩山が動き出した。

 よく見ると岩山だと思ったのは、ごつごつとした皮膚をもった魔獣だった。その岩山のような魔獣が動き出し、大きなうなり声を発した。


 そのうなり声は鼓膜が破れそうなほどの大きな音で、思わず耳を両手でふさいだ。


「ま、まさか! あ、あれは、ストーンアリゲーター!?」


 エリは振るえる声で叫んだ。


「何でここにいるのよ!」


 セーラは泣き出しそうな顔で、立っているのもやっとという感じだ。


「に、逃げるのよ!」


 エリがセーラと俺にそう言って、後ろに数歩下がった。


「逃げるってどこへ? それにあいつはすでに俺らを獲物として認識したようだぞ」


 エリとセーラの顔から血の気がなくなり、言葉もでなくなったようだった。


「あんたらはここでじっとしてろ。俺が対処する」


 そう言って俺は魔法剣を取り出し、剣と身体に身体強化魔法をかけた。


 ストーンアリゲーターは岩のような肌に4本足でしっぽが長く、細長い頭には大きな口がついていた。

 俺はストーンアリゲーターの意識をエリとセーラから外すために、わざとゆっくり近づき、攻撃をするふりをして横に移動した。思惑通りストーンアリゲーターは俺を標的と定めたようで、首を俺に向けて口を開けた。


「ブレスが来るわよ!」


 エリの叫びが聞こえて、強化した足で地面を蹴ってストーンアリゲーターの後ろ側に移動した。俺が移動した瞬間に、ストーンアリゲーターの口から出た炎が、辺り一面を焼いた。


「あぶっねぇ」


 ほっとした瞬間、黒い影が見えてすかさず避けた。


「バシッ!」


 ストーンアリゲーターがしっぽを地面に叩きつけたことで、地面が抉られて土埃が舞った。もう一度影が見えたので、横に飛んで避けた。しっぽの攻撃を外したら、今度は顔を俺に向けて、口を開けてブレスをはきだした。


「こっちから攻撃する暇を与えない気か」


 地面を蹴って横に飛び、ブレスを避けた。横に飛んでからすぐに上にジャンプしたところに、ストーンアリゲーターのしっぽが飛んできた。空中で身体をひねってしっぽを避けて着地した場所に、すかさずしっぽの攻撃がやってきた。

 避けているだけじゃ攻撃できないので、しっぽを剣でいなしたら身体ごと吹き飛ばされた。


「くっ、なかなか力が強いな」


 身体を反転させて足から地面に着地し、体勢を立て直してストーンアリゲーターとの距離をじりじりと詰めていくと、再びブレスを吐き出してきた。ブレスが届く前にストーンアリゲーターの後ろにジャンプして移動すると、今度はしっぽを叩きつけてきた。

 俺はぎりぎりでしっぽを躱し、すかさずストーンアリゲーターの背中にジャンプして飛び乗った。ストーンアリゲーターはしっぽを器用にまわして、俺を叩き落そうとしたが、俺はしっぽを掻い潜りそのまま首へと走った。

 ストーンアリゲーターは前足を上げて立ち上がろうとしたが、俺はそれよりも早くストーンアリゲーターの首をめがけて魔法剣を力いっぱい振り下ろした。硬い手ごたえがあったが、そのまま力ずくで振りぬいた。

 ストーンアリゲーターは「グオォー」といううなり声を上げながら倒れた。俺は倒れ行くストーンアリゲーターの背中からジャンプして、地面に着地した。身体強化魔法をかけずにこの高さから落下したら、無傷では済まなかったかもしれない。


「この剣、やっぱり切れ味いいな」


 立ち上がって独り言をつぶやいた俺に、エリとセーラが目を見開いて硬直していた。


「な、何? 今のは?」

「夢じゃないよね」


「どうした。何か変だったか?」


「変てもんじゃないわよ!」

「あなた一体何者なの?」

「ストーンアリゲーターを1人で倒すって、いったい」

「それに、その剣! 何でストーンアリゲーターがそんなに簡単に切れるのよ!」


 次々に文句を言ってくるエリとセーラは、どうやら俺が1人で倒してしまったことに不満のようだ。


「すまん、すまん。あんたらも戦いに参加したかったのか?」

「そうじゃないわよ!」

「あなたが普通じゃないのよ!」

「何がそんなに不満なんだ?」

「不満なんじゃないけど、冒険者でもないあなたが何でそんなに強いのよ!」

「そりゃ身を守るために鍛えたからな」


「はぁっ。強いのはまあいいわ。それよりその剣、普通じゃないわね」

「ああ、これか。これは昨日ロッテンの工房で買った魔法剣だ」

「魔法剣!? 聞いたことがあるわ。あなたはそれを使えるのね」

「鍛錬すれば誰でも使えるようになるらしいぞ」

「誰でも使えるようにはならないから。使えるのはごく一部の人よ」

「そうなのか?」

「それに、魔法剣に魔法を付与しても、普通はあんなに切れないはずよ。火魔法を付与したら切った相手に火のダメージを与えるとか、風魔法なら剣の速さが早くなるとかそういう効果しかないって聞いたわよ」

「そういうものなのか」

「あなたは一体何の魔法を付与したのよ?」

「いや、何だな。ははははは」


 ここで身体強化魔法のことを言ってしまうのはまずいような気がして、適当にごまかした。

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