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第13話 報酬

魔獣討伐の報酬を受け取ります。

 エールを飲みながら3人で話をしていると、アリサとは別のギルド職員から査定が終了したので応接室に来るようにと言われた。


「応接室? 珍しいな」


 ライドはそう言って席を立った。


 ギルド職員に案内されて応接室まで行き、ライドがドアにノックをすると、「どうぞ」と中から野太いおっさんの声がした。

 3人揃って中に入ると、ソファーに座ったおっさんがいた。そして、その後ろにアリサが立っていた。ソファーに座っていたおっさんは、俺らの顔を見て名乗った。


「やあ、よく来てくれたな。俺がこのギルドのマスターをやっているジェイクだ」


 どうやらソファーに座っていたのはギルドマスターのようだった。どうりで座っていても隙が無い。腕の立つ冒険者だったのだろう。


「ま、掛けてくれ」


 ギルドマスターは、向かいのソファーを手で示した。

 俺ら3人が、ライド、キリア、俺の順にソファーに腰を下ろしたのを確認して、ギルドマスターは話し始めた。


「まずは、このトマスの依頼を受けてくれたこと、そして依頼を完了してくれたことに感謝する」


 ギルドマスターは軽く頭を下げた。


「最近、魔獣が増えているようでね、なかなかトマスの冒険者だけでは対応しきれないことも多いんだよ」


 ギルドマスターにはギルドマスターとしての悩みもあるようだ。


「ところで、君たち2人は王都の冒険者だな」

「はい」


 ライドとキリアが答えたのを確認して、俺の方に顔を向けた。


「それと君は冒険者じゃなく、旅人だそうだな」

「ああ、そうだ」

「かなりの腕前だと聞いたが、なにかやっていたのか?」

「まあ色々な人に教えてもらったが、基本は自己流だ。旅に危険はつきものだからな。自分の身は自分で守れるくらいには訓練したさ」

「そうか。ところで、今回の依頼はオークだったな。Bクラスの冒険者2人なら、1対1くらいでの戦いはできるだろう。しかし、4体いたうちの2体は、君が倒したということで間違いないか?」

「ああ」

「それからゴブリン、これは特に問題にするほどのことではないが、ゴブリンジェネラルとなると話が違ってくる。ゴブリンジェネラルは1体だけでいることはまず無いから、必ず取り巻きが数体いるはずだ。今回もいたはずだが、これを倒すにはけっこう面倒だ。それを易々と倒してしまったそうじゃないか。一体君は本当に何者なんだね?」

「俺は単なる旅人だぞ」

「その旅人が、トマスへやって来た目的は何だ?」

「うーん、そうだな。霊峰見物?」

「何でそこで疑問形なんだ?」

「まぁそんなところだ」


「君のような腕の立つ人間がどこにも所属していなくて、1人で旅をしているっていうのがどうも引っ掛かってね。見たところアメルダスタ王国の人間のようだが、王国の関係者なのか?」

「いや、まったく関係ない」

「国外へ行ったことは?」

「行ったことはない」

「そうか、ならいいんだ」

「シゲルとは何日か一緒にいただけだけど、悪い奴じゃないですよ」


 俺とギルドマスターの会話にライドが割って入ってきた。俺を擁護してくれているのか?


「ああ、分かっている。彼のことを疑っているわけじゃないんだが、ギルドマスターとして確かめたかっただけだよ」


 そう言ってギルドマスターは後ろを振り向いて、アリサから小さめの木箱を受け取った。テーブルの上にその木箱を置き、蓋を取ると金貨が10枚入っていた。


「今回の報酬だよ」

「えっ! 何でこんなに!」


 ライドとキリアが驚いた様子で目を見張っている。俺はそもそも報酬の相場が分からないので、この額が多いのか少ないのか判断しようがない。ただ、ライドとキリアの様子から、相場より多いのだろうと思った。


「これはオークの討伐とゴブリン及びゴブリンジェネラルの討伐に加え、それらの情報料も含まれている。ゴブリンジェネラルが現れると、ゴブリンの勢力が一気に広がるから非常に厄介なんだ。今回は未然に防いでくれたのと、発生した場所の情報をもらったから、勢力が広がる前にその周辺や巣窟を未然に駆除することに役立てられる。本来は冒険者じゃない人間に報酬は出ないのだが、君たちの成果に対する特別報酬だ。どう分けるかは3人で相談して決めてくれ」


 そう言って金貨の入った木箱を渡してきた。ライドは少し緊張した様子で答えた。


「ありがたく頂戴します」


 オークの討伐やゴブリンジェネラルとの戦いのことを色々聞かれ、身体強化魔法のことは抜いたがほぼその通りに話をした。根掘り葉掘り聞かれ、解放されるまでずいぶんと時間を要した。


 応接室を出た3人はとりあえず宿に向かうことにした。ライドとキリアが泊まっていたのは俺と同じ宿だったので、一緒に戻ってきた。


 宿ではライドの部屋に集まって、もらった報酬金の分配について相談をした。



「だから、このうちの半分はお前の取り分だって」

「そんなに必要ない」

「頑固ね」


 あきれたようにキリアは言った。


「わかった、それじゃぁ3等分にしよう。3人で依頼を完了させたんだから、3人で均等に分ければいいんじゃないか」


 ライドが諦めたように言うのを聞いて、俺もまあ良いかと従った。今日1日でライドとキリアがずいぶん疲れた感じになった。


 またぜひ再会したいというライドとキリアに、別れを言って部屋に戻った。

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