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75.【出発準備】

 前回はユリが目をふさいでくれたのだが、今回はユリも固まってしまったようだ。そのため、俺の視界を遮ってくれるものがなく、マリーナさんの裸体をがっつりと見てしまった。


「な……なんで……ちゃんと縛ったのに……」


 どうやら亀甲縛りをしたのはミケーラさんのようだ。固まっていたミケーラさんが怒りに身体を震わせる。


「この……この馬鹿姉が!!」

「ぎゃっ!!」


 ミケーラさんがマリーナのお腹を踏みつけた。マリーナさんは目を覚ましたが、かまわず踏み続ける。


「普通に! 縛っても! 気付いたら! 脱ぐから! わざわざ! 亀甲縛り! したのに!!!」

「ぐえ! ミ、ミケーラ! うぐ! 痛い! 痛いって! どうしたのさ! ってあれ、動けない! た、助けて!!」

「黙りなさい!!」


 両手を背中で縛られているため、立ち上がったり、避けたりすることができないようだ。何度も踏みつけた後、ミケーラさんは俺達に土下座した。


「アレン様、誠に……誠に申し訳ありません! こうならないよう、ちゃんと縛っておいたのですが……。イリス様も申し訳ありません!」

「え、いや……あの……」

「キャーーーー!!!」


 土下座するミケーラさんの後ろでマリーナさんが絶叫する。


「わ、わたし! また! やだ、動けない! 見ないで! あ、いや助けて!」

「…………アレンさん?」

 

 急に背中に寒気を感じて振り向くと、クリスさんがこちらを向いていた。その顔は笑みを浮かべているものの、目が全く笑っていない。


「ずいぶん凝視されていましたね」

「え、あ、いや……」


 固まって動けなかっただけで、凝視していたつもりはなのだが、確かに目を逸らしたりはしなかった。


「…………アレンさんはお胸の大きい女性が好きですか?」

「はい??」


 クリスさんが自分の胸に手を当てて聞いてきた。


(胸……確かに、服を着ているときは分からなかったけど、マリーナさんって意外とスタイルが……いやいや! 何を考えてる!?)


 産まれて初めて女性の裸を見て混乱しているようだ。今考えるべきはそこじゃない。


「大きさなんて気にしみゃ…………気にしませんよ」


 思いっきり噛んでしまった。クリスさんの顔がどんどん悲しそうな表情になる。


(クリスさんの胸だって気にするほど小さくはないはず……いや、見たことないけど……って、そうじゃなくて!)


 混乱する俺にユリが耳打ちをした。


「お兄ちゃん。こういう時は、『俺が好きなのはクリスさんの胸だけです!』って言えばいいんだよ」

「! ……俺が好きなのはクリスさんの胸だけです!」

「!!??」

 

 混乱した俺は、ユリに言われたことをそのまま口にしてしまったが、重大なミスをした気がする。実際、言われたクリスさんは顔を真っ赤にしてしまった。


「そ、その……アレン様。そう言ったことは結婚した後に……」

「す、すみません……」

「あ、いえ。殿方として健康な証ですのでお気になさらず……」

「あ、あははは……」


 何とも言えない空気に笑ってごまかすしかなかった。ニヤニヤしているユリが腹立たしい。


「あのー。熱々なところ悪いんだけどそろそろ助けて……」


 後ろから声が聞こえるけど、俺は振り返るようなことはしない。


「俺、倉庫の外に出てますね!」

「そうですね! 片が付きましたらお呼びしますので、絶対に(・・・)中を見ないでくださいね」

「もちろんです!」


 俺は、マリーナさんに背中を向けたまま倉庫の外に出る。外に出ると、そこには父さんとバミューダ君がいた。


「おー、アレン。災難だったな」

「悲鳴が聞こえたけど大丈夫だった? ……です?」

「あー、大丈夫だよ。2人は倉庫に入らなかったの?」

「おう。ミケーラさんは大丈夫だと言ってたけど、マリーナさんの事だからな。念のため外で待っていた。バミューダにも一緒にな」


 さすがの危険回避能力である。マリーナさんのあんな姿(・・・・)を母さんの前で見ていたら、今頃どうなっていたか……。


「今、女性陣が対処してるから、終わるまで待ってよ」

「そうだな」

「はい……です」


 マリーナさんを亀甲縛りしていたロープはかなり頑丈なものだったようだ。30分程して、ようやく俺達は中に呼ばれた。


 少し遅くなってしまったが、商品を確認して、出発の準備を進める。


(作ってくれた品はどれもいい出来だった。腕はいいんだよな、腕は……)


 マリーナさんとミケーラさんは荷馬車最終確認をしていた。


「うぅぅ……全部見られた……もうお嫁にいけない……」

「どうせ誰ももらってくれません。御託はいいから、とっとと手を動かしなさい」

「ひどい!」


 その後ろでは、母さんとバミューダ君がなにやら打ち合わせをしている。


「いい? バミューダ君? 荷馬車を使った、商品を運びながらの移動は盗賊に狙われやすいの。この町と私達の町位の距離だったら大丈夫だけど、ブリスタ領まで行くとなると、まず間違いなく襲われるわ。その時、私が皆を守るから、バミューダ君は盗賊を捕まえてみなさい」


 どうやら護衛方法について話しているようだ。今更だが、母さんは腰に刀をつけていて、バミューダ君は手と足に防具をつけていることに気付いた。


(自然すぎて気付かなかった。でも……)


「バミューダ君に盗賊の相手をさせるの? 危なくない?」


 バミューダ君の身体能力が高いのは理解しているが、戦闘能力は別だ。いきなり実践で戦うのは危ないと思って母さんに聞いたのだが……。


「大丈夫よ。心配なのは盗賊の命ね」

「大丈夫……です。ちゃんと、お母さんに教わった……です。狙っていいのは足や手だけ……です」

「その通りよ。ただし、深追いはせず、危ないと思ったらすぐに逃げること。いいわね?」

「はい! ……です!」

「よろしい。アレンもそんな心配そうな顔しないの。バミューダ君なら大丈夫よ」


 母さんがそう言うなら大丈夫なのだろう。まだ少し心配だが、任せることにする。


 そうしている間に、マリーナさん達の最終確認が終わった。


 さぁ、いよいよ出発だ!

ようやく出発です!

次回、バミューダ君が大活躍!

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