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74.【悲劇、再び】

すみません! 遅くなりました!

 母さんとのトレーニングを終えた翌朝。俺は起き上がることができなかった。


 母さんのトレーニングにバミューダ君が余裕でついていくものだから、テンションの上がった母さんが、どんどんトレーニングを厳しくしていったのだ。


「お兄ちゃん。大丈夫? ……です?」

「お兄ちゃん。そろろそ起きよー」


 時刻は昼頃だろうか。ずっと元気だったバミューダ君と、何とか朝起き上がることができたらしいユリが俺の部屋にやってきた。


「『アレンもそろそろ起きられるはずだからお昼は一緒に食べよう』ってお母さんが言ってるよ」


 朝、ベッドから起き上がることができなかった俺は、朝ご飯はバミューダ君に食べさせてもらったのだ。


(バミューダ君、嬉しそうだったけどさすがに恥ずかしいんだよな…………ふんっぬ!)


 俺は全身に力を入れてベッドから起き上がる。


「ふんぐ…………ぐぅぅう……」


 全身が筋肉痛を訴えてくるが何とか起き上がることができた。


「お、おはよう……2人とも元気だね……」

「もう早くないよー。そして私は元気じゃないよー」

「あう、あ、えっと、あの……2人とも大丈夫? ………です?」


 バミューダ君が心配そうな眼で俺達を見ている。本当は大丈夫じゃないが、これ以上兄の威厳を失うわけにはいかない。


「ありがとう。もう大丈夫だよ。さぁ、リビングに行こうか」

「私がお兄ちゃんを連れて行くからバミューダ君は先に行ってて」

「え? あ……わ、分かった……です」


 素直なバミューダ君はユリの言葉に従って部屋から出て行った。


「…………よく平気だな」

「ふっふーん。まだまだ若いのよ…………あいたた」


 胸を張った拍子に腹筋や足の筋肉が筋肉痛を訴えたのだろう。ユリは座り込んでしまう。


「大丈夫か?」

「何とか……さ、リビングに行くよ。お兄ちゃんに合わせてゆっくり行ってあげるから!」

「…………頼む」


 負けず嫌いな妹に支えられて、俺は何とかリビングへ向かった。



「おー、アレン。ようやく起きたか。大丈夫……ではないな」

「まったく……ユリちゃんもバミューダ君も起きれたのに、長男のあなたが一番遅くてどうするの」

「うぅ……面目ない……」


 自分でも情けないと思うが、身体がいう事を聞いてくれないのだ。


「大丈夫! ……です! お兄ちゃんは僕が守る! ……です!」

「まぁ! バミューダ君は本当にいい子ね! 午後も一緒に運動する?」

「はい! ……です!」

「楽しみだわ。アレンとユリちゃんは――」

「「――遠慮します!」」


 とてもじゃないが、動ける気がしない。


「まぁ、仕方ないわね。2人ともゆっくり休んでなさい」

「「はーい……」」

 


 昼食を食べた後、俺とユリは回復に専念した。


 夕方になり、ようやく馬車に乗れるくらい回復したので、お店をミルマウス夫妻に任せて支店に戻る。支店に着くと、マグダンスさんが出迎えてくれた。


「アレン様、お帰りなさい。その……またですか?」

「マグダンスさん、ただいま戻りました。……また、です。すみませんが後を任せます」

「承知しました。クリス様が『お父様から手紙が届いた』っておっしゃっていましたよ。休憩室におられるはずです」

「あ、分かりました。ありがとうございます」


 マグダンスさんにお礼を言って休憩室に向かう。


「クリスさん、ただいま戻りました」

「! アレンさん、お帰りなさい。今回()お疲れですね。お父様からお手紙が届きましたよ。『明々後日から漆塗りできるように準備しておく』とのことです」

「本当ですか! 良かったです。それでは、明日の朝一にフィリス工房に行って、マリーナさん達と合流したらブリスタ領に向かいましょう!」

「はい!」


 大人気の漆を2日後に使えるようにしてもらえるとは思わなかった。マリーナさんにも無理してもらった甲斐があったようだ。


 翌日からの移動に備えて、この日は早めに就寝した。




 翌朝、お店をマグダンスさんに任せて俺とクリスさん、父さん、母さん、ユリ、バミューダ君の6人でフィリス工房に向かう。


 フィリス工房に着くと、ミケーラさんが工房の外で出迎えてくれた。


「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


 ミケーラさんが俺達を倉庫に案内する。倉庫の入口が近づいた時、父さんが立ち止まった。


「あー、俺はこの辺で待ってようかな。バミューダも一緒に待ってようか」

「分かった……です。でもなんで? ……です?」

「それはだな。……教育に悪いというか……その……念のためだ!」

「???」


 その様子を見て、初めて倉庫に来た時の事を思い出す。


(前に来た時には、倉庫の中に全裸のマリーナさんが……)


「俺もここで待ってようかな」

「そうだね。私達が確認してくるから、お兄ちゃん達は待ってて」

「――いえ、商品の受け渡しがありますので、アレンさんは来てください」


 立ち止まった俺に、ミケーラさんが声をかけた。 


「……ミケーラさん? うちの息子に何を見せるつもりですか?」

「大丈夫です、イリス様。今日は服を脱げないようにしていますので、安心してください」


(脱げないようにしている?)


疑問を感じたが、大丈夫というのでついて行く。ミケーラさんが倉庫の入口を開けてくれたので、一緒に中に入った。


「こちらです。『メンコ』、『独楽』、『羽子板』、『蹴鞠』が30個ずつ、漆を塗る前の状態で――」


 先行してくれていたミケーラさんが一点を見つめて固まった。


(どうしたんだろ? まさか、商品に問題が!?)


 慌ててミケーラさんの視線の先を見る。


「なっ!」

「あら……」

「え?」


 その場にいた全員の足が止まった。あまりの衝撃に誰も動くことができない。そこには、亀甲縛りされたまま全裸で眠っているマリーナさんがいたのだ。

これくらいならR18に引っ掛かりません……よね?

次回もお楽しみに!

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