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65.【新メンバー】

今日もほのぼの回です。

 翌朝、朝の掃除をしていると、ミーナ様に声をかけられる。


「おはようですわ」

「おはようございます。早いですね」


 9時までまだ、1時間近く時間がある。


「目が覚めてしまいましたの」

「そうですか……そういえばバミューダ君も、初日は1時間以上早く来ましたね」

「バミューダ様も……」


 ミーナ様が顔を赤めた。まだまだ付き合いたての初々しい時期だ。


(皆、俺とクリスさんの事はからかうくせに、バミューダ君とミーナ様の事は温かく見守るんだよな……まぁ気持ちは分かるけど)


「せっかくですから、一緒に開店準備をしましょうか」

「分かりましたわ。何をすればいいですの?」

「まずはお店の周りの掃除です。……ミーナ様、掃除ってしたことありますか?」

「ありませんわ。ですが、リンダや他のメイドがやっているのを見たことはありますの」


(……どう考えても、大事に育てられてるよなぁ)


「では、箒を使って掃き掃除をお願いします。私がゴミを集めますので」

「はいですわ!」


 ミーナ様が元気よく返事をした。初めての掃除にわくわくしているように見える。


 意外、と言ってしまっては失礼かもしれないが、ミーナ様は丁寧に掃除をこなしていく。


(掃き残しもないし、ゴミも拾いやすくまとめてくれる。初めてとは思えないな……)


 ミーナ様が手伝ってくれたおかげで、皆が来てからやる予定の店内の掃除まで終わらせることができた。


「お疲れ様です。そろそろ朝礼の時間ですので、休憩室に行きましょう」

「分かりましたわ」

「それから、今日は助かりましたが、明日からは9時に来て頂ければ大丈夫ですよ。疲れちゃいますから、朝はゆっくり休んでください」

「あ……はいですわ」

「ちなみにバミューダ君にも同じことを言いました」

「――!! そ、そうですの……」


 またしても、ミーナ様が顔を赤める。


(本当に好きなんだな。2人が婚約出来てよかった)


 休憩室に着くと、従業員の皆の他に、俺が呼んだマーサさんとリンダさんもいた。


「あ、ミーナ様いた! ……です!」

「バミューダ様! おはようございますですわ!」

「おはようございます! ……です!」


 2人が元気よく挨拶すると自然と場の空気が温かくなる。


「ミーナ様、朝、寮にいなかった? ……です?」

「早く起きてしまったので、先にお店に来ていましたの」

「ダメ! ……です! 朝は休まないと疲れちゃう! ……です!」

「あ……そうですわね。明日からはゆっくり来ますわ」


(バミューダ君がミーナ様に注意している! なんかいい!)


 バミューダ君の成長が嬉しかった。


「それでは朝礼を始めます。まずは連絡事項から――」


 温かい空気の中、いつものように朝礼を始める。


「――連絡事項は以上です。それから……ミーナ様、前に来てください」

「はいですわ」

「先日お伝えしました通り、本日からミーナ様にはクランフォード商会の従業員として働いて頂きます。ミーナ様、自己紹介をお願いします」

「――はいですわ。皆様、改めましてミーナ=ミルキアーナと申しますわ。気軽にミーナと呼んでくださいませ。読み書きや計算は一通りできますが、商人として働いたことはありませんの。どうぞ良しなにしてくださいませ」


 そう言ってミーナ様が頭を下げると、皆、笑顔で拍手をしてくれる。特にバミューダ君が大きな拍手をしていた。


 そんな中、ユリがミーナ様に話しかける。


「よろしくね! ミーナ様!」

「はい! よろしくお願いいたしますわ、ユリお義姉様」

「お、お姉様……はわわ」


 よほど嬉しかったのか、お義姉様と呼ばれたユリは身悶えた。


「そういえば、わたくしとアレンさんが婚約したら、ミーナ様が義妹になるんですね」

「そ、そうですわね、クリスお義姉様」

「……なんでしょう。この何とも言えない可愛らしさは……」


 クリスさんもとてもやさしい表情を浮かべている。


(ユリとクリスさんを一瞬で骨抜きにするとは……ミーナ様、恐ろしい子!)


「ミーナ様、ありがとうございました。それからもう一人ご紹介します。リンダさん、前に来てください」

「はい!」

「リンダさんはミーナ様の侍女として、ミルキアーナ男爵が派遣してくださいました。これからは、マーサさんのもとでミーナ様のお世話をして頂きます」

「皆様、よろしくお願いいたします。私はミーナ様の侍女ですが、手が空いているときは、マーサ様のお手伝いをさせて頂くつもりです。何かお困りのことがございましたら、お気軽にお申し付けください」


 そう言ってリンダさんは頭を下げた。皆、拍手で迎えている。そんな中、ニーニャさんがリンダさんに話しかけた。


「リンダはん。もう体調はええんか?」

「……ええ。頂いた栄養ドリンクのおかげです。ありがとうございました」


 リンダさんは栄養ドリンクの味を思い出したのか、顔を青くする。


「そら良かった。店でも人気の栄養ドリンクやからな。また持ってこよか?」

「い、いいえ! ご心配には及びません! この通り、すっかり元気ですから!」

「そか? 美容にも良いゆうて女性に大人気なんやけどな」

「美容! ……ですが……でも……うぅ……」

「ちなみにはちみつを入れるとまろやかになって飲みやすうなるで」

「それを早く言ってください!!」


 どうやらずいぶん仲良くなったようだ。ニーニャさんが新しいおもちゃを貰った子供のような顔をしているのは気のせいだと思いたい。


 そろそろいい時間なので、俺は声を上げる。


「えー、皆さん。そろそろ開店準備を始めましょう。ミーナ様が手伝ってくださったので、店内の掃除は終わっています。なので、今日は品出しから始めます。それでは、今日も一日よろしくお願いします!」

「「「「「よろしくお願いします!(わ!)(……です!)」」」」」


 今日もまた、クランフォード商会の一日が始まった。

明日はあの人があの人の解説をします。明後日からは物語が進みますので、もう少々お付き合いください。

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