表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/214

33.【面接結果】

これから出かけるため、朝早くの投稿です。

 ベーカリー・バーバルでパンを買って支店に戻ってくる。途中でマグダンスさんとナタリーさんが一緒に昼休憩をしているところを見かけた。


(あの2人絶対そういう関係だよな。まぁ言わないけど)


 大量のパンを抱えて店長室に入り、テーブルの上に買ってきたパンを置いた。


「それでそれで? 面接の結果はどうだったの?」


 ユリがソファーに座って聞いたきた。かなり気になっている様子だ。俺は机の引き出しから先ほどしまった名簿を取り出す。


「落ち着けって。心配しなくてもマナは採用だよ」


 俺もソファーに座りながら答えると、ユリは嬉しそうに笑った。


「やった! マナちゃんと一緒に働けるんだ!

「ちなみに『将来は、ユリピと結婚してマナ=クランフォードになる予定』って言ってたな」

「マナがお嫁さんに来てくれたら毎日楽しそうだね!」

「俺は心労で倒れる気がする……、」

「あはは。お兄ちゃんファイト!」


 盛り上がる俺達の横で父さんがパンを食べながら聞いてくる。


「アレン、他の方はどうだった? 結局何人採用したんだ?」


 父さんも気になる人がいるのか、珍しくそわそわしていた。


「ほかに雇いたい人は5人だよ。バミューダ=バルス君、クリス=プリスタ様、ニーニャ=アナベーラさんそれに、マグダンスさんとナタリーさん」

「……シャル様とミルキアーナ様は雇わないのか?」


 父さんが気にしていたのはその2人なのだろうか。


「うん。シャルさんは住み込みが難しいからって辞退されたよ。ミルキアーナ様は見るからに不機嫌そうだったから働きたいわけでもなさそうだしいいかなって」

「そうなの? お兄ちゃんが失礼なこと言ったんじゃない?」

「失礼な! 何も言う前に出て行っちゃったよ。侍女のリンダさんにもなぜか睨まれた…………」


 よくよく考えるとリンダさんに睨まれた理由が分からない。ユリの言う通り、何か失礼があったのだろうか。


「そ、そうか。シャル様は辞退されたのか……」


 父さんが気にしていたのはシャル様の方か。何者なのだろうか。


「父さんはシャルさんの事、何か知っているの?」

「んん!? シャルさん(・・)って…………んーまぁな。父さんというより母さんがよく知っているんだ。詳しくは聞かないでくれ」


 ものすごく気になるが、そう言われたら無理に聞くわけにはいかない。俺達は知らない方がいい事なのだろう。知る必要があることなら、父さんは隠さず教えてくれる。


「わかった。それじゃあ食べ終わったら、ユリが描いてくれたデザイン画をもってフィリス工房に向かおう。そういえば、アナベーラ商会の看板の下絵って描けたの?」


 昨日は筋肉痛でそれどころではなかったはずだ。そう思ってユリに聞いてみた。


「描けたよー。さっきの待ち時間に描いちゃった」


 さすがである。どのような看板になるのか気になったが、楽しみは後にとっておいた。


「それじゃ一緒に働くことになった貴族令嬢のはプリスタ様だけか。あの方もなかなか苦労されているようだな」

「そうなの!?」

「なんだアレン。気になるのか?」


 クリス様が苦労されていると聞いて思わず反応してしまった。


「そりゃ……これから一緒に働くわけだし、気になるよ」

「ほー、それだけか?」


 からかうような父さんの口調につい、ムキになってしまう


「クリス様は子爵令嬢なんだ。変な気は起こさないよ」

「……いやお前。それ以前に、子爵令嬢を名前呼びするのはまずいぞ」

「? クリス様が名前で呼んでくださいっておっしゃってたよ。仲良くなったら呼び捨てにしていいって」

「………………そうか。ご本人の許可をもらっているなら問題ないか」


 驚いた顔の父さんに先ほどの事を聞く。


「それで、なんで苦労されているの?」

「あー……家が色々大変らしい。何年か前に事業に失敗していて、金策で苦労されているって聞いたぞ」


 そう言えば、『料理や掃除なども花嫁修行としてこなしてきた』っておっしゃっていた。


(もし俺が金持ちになったら、嫁ぎに来てくれるんだろうか……って何を考えてる!?)


「「じー…………」」

「な、なに?」

「アレンは分かりやすいな」「お兄ちゃん、変なこと考えているでしょ?」


 父さんとユリが何を言っているのか、俺は分からないふりをした。




 昼食を食べてフィリス工房に向かう。ミッシェル様はもう着いているだろうか。


「あ、そういえば、ミッシェル様の娘さんも従業員に応募して下さってたよ。名前見た時は驚いちゃった」

「お、ニーニャ=アナベーラさんか? やっぱり、アナベーラ会頭の娘さんだったか……どんな方だった?」


 あらかじめ名簿を見ていた父さんはうすうす感づいていたようだ。


「んー……色々(・・)ミッシェル様にそっくりだった」


(見た目も、性格も、しゃべり方もそっくりなんだよなぁ。あれ、ニーニャさん、夜伽とか言ってたけどミッシェルさんって前にその手の話になったら顔真っ赤にされてたよな? そこだけ違うのかな?)


 俺が思案していると、急に隣から寒気を感じた。隣を見ると、ユリが冷たい目で俺を見ている。


色々(・・)? お兄ちゃん、面接で何を見てたの?」


 何やら誤解を受けている気がする!


「な、何って……性格とかしゃべり方だよ!」

「ふーん…………それだけ?」


 あえて見た目については触れなかった。触れたらまずい気がしたのだ。特に夜伽のことは絶対に内緒にするべきだろう。


「それだけだよ! 頭の回転が速くて、人をからかって楽しむところとかそっくりだったんだ!」


 話を打ち切るために俺が前を向くと、そこにはヴェールを被った女性がいた。


「――アレンはんはわての事、そんな風に見とったんやねぇ」

「!?」


 ミッシェル様だった。

ミッシェル様が登場して引きになることが多い気がする。それだけインパクトの強いキャラなんだよなぁ。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

ブックマーク、高評価、感想などを貰えると大きなモチベーションになりますので、応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ