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30.【面接2 貴族令嬢】

本日1話目、新キャララッシュの第2弾です。ようやくこのキャラ出せました!

 従業員として、働いてもらうためには接客をするための『礼儀正しさ』、勘定をするための『計算能力』、商品を管理するのための『読み書き』、そして商品を出し入れするための『肉体能力』が必要となる。


 正直、バミューダ君は肉体能力以外、従業員として不合格だ。それでも俺は彼を雇うことにした。


 それは同情かもしれない。ただの偽善かもしれない。それでも俺は彼を雇いたいと思った。


(店長は俺なんだ。俺の好きにするさ)


 他の従業員は礼儀や頭脳面で優れた人を雇えば問題ない。俺はそう考えていた。




「――――まじか……」


 5人目の面接を終えたところで名簿を見直す。名簿に丸印がついているのは、バミューダ君の隣だけで、残りはバツ印がついていた。


 おそらく俺が幼かったため、なめていたのだろう。『自分を副店長にしろ』と言い出したり、『リバーシの特許権を寄越せ』と言ってきた。


(むしろバミューダ君って当たりだったんじゃ)


 そんなことを考えながら俺は次の人を待った。



「コンコン」

「どうぞー」

「失礼します」


 ドアが開く。入ってきたのは、青い髪、青い瞳の美少女だった。


「はじめまして。わたくしはクリス=ブリスタ。ブリスタ子爵家の三女です。今年、12歳になりました。よろしくお願い致します」


 満面の笑みを浮かべ、いかにも貴族といった洗礼された仕草でお辞儀をした。不思議と場の空気が暖かくなる。ドキドキしてしまうのは男のサガだろう。


(まじか!? 子爵令嬢ってこんなに綺麗なの!? 本当に同じ人間か? …………いや落ち着け。俺は精神年齢42歳! しかも今は面接官なんだ! 誰が相手でも引いちゃいけない!)


「そちらにお座りください」


 焦る心をなんとか抑えて、用意した対面のソファーに着席を促し、自分も座る。


「面接官のアレン=クランフォードです。こちらこそよろしくお願いします。ブリスタ様」

「クランフォード様、わたくしは面接を受けに来たのですよ? わたくしのことはクリスと呼び捨てにしてくださいな」


 そんなわけにいくか! 貴族を呼び捨てにしたら、不敬罪で殺されても文句は言えない。しかし、貴族の命令を無視するわけにもいかない。


「そうですね……それでは、クリス様と呼ばせて頂きます。初対面の女性を呼び捨てにするわけにはいきませんので。私のこともアレンと呼んでください」

「まぁ、アレン様は誠実でいらっしゃるのですね。呼び捨てで構いませんのに。では、仲良くなりましたら、ぜひ、呼び捨てにしてくださいませ」

「……かしこまりました」


 面接をするはずがお見合いのような空気になってしまった。


(落ち着け。落ち着け)


 気を取り直し、面接を再開する。


「クリス様はどのようなお仕事ができますか?」

「基本的なことはできるかと思います。計算や読み書きなどは習って来ましたし、料理や掃除なども花嫁修行としてこなしてまいりました。ただ、商人として働いた経験がないので、いろいろ教えて頂ければ幸いです」


 下級貴族の女の子は、裕福な商人などの平民に嫁ぐこともよくある。子爵家とはいえ、三女のクリスは、持参金目的の結婚をする可能性があったのだろう。商人としての下地は十分磨かれていた。


(家のために自分を磨いてきたのか。いい子だなぁ)

 

「もちろん仕事は教えさせて頂きます。計算ができるのでしたら、即戦力ですよ。ただ、寮は平民の方と一緒になりますがよろしいですか?」


 念のため確認する。寮は用意していたが貴族の方専用というわけではない。


「ありがとうございます! もちろん大丈夫です。働かせていただく以上、特別扱いなど無用です」


(めっちゃいい子じゃないか! 本当に貴族令嬢か? もっと傲慢なイメージだった。なんか申し訳ないな)


 俺はクリス様の真面目さ、誠実さ、そして暖かく優しい雰囲気に完全にやられていた。


「承知しました。以上で面接は終了となります」


 俺はそう言って姿勢を正した。


「面接の結果ですが、ぜひクランフォード商会の従業員として一緒に働いて頂きたいです。問題なければ明日の朝9時にお店に来てください」


 そう伝えた瞬間、目の前に青い可憐な花が咲いた。


「ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」


 花ではなく、クリス様だった。だが、俺にはとても可憐な花に見えたのだ。


「こちらこそ、よろしくお願いします。気を付けてお帰りください」


 これほど、噛まないように注意して口を動かしたのは初めてかもしれない。何とか噛まずに言い切る。


 クリス様が立ち上がり、丁寧なお辞儀をした。俺も立ち上がりお辞儀を返して、クリス様が出て行くのを見送る。


 後姿を見つめていると、ドアを閉めるために振り返ったクリス様と目が合った。クリス様は再びにっこりとほほ笑んでくれたので、俺も笑みを返す。


 ドアが閉まるまで何とか顔を崩さないように耐えた。ドアが閉まると同時にソファーに倒れこむ。身体中の筋肉が弛緩するのを感じる。


(本当にいい子だなぁ)


 心地よい疲労感を感じながら、ソファーに座り直し、鏡を見る。顔のほてりは感じていたが、想像以上に真っ赤になっていた。


(何意識してんだよ! 相手は子爵令嬢だぞ! 俺なんか相手にされるわけないだろ! 落ち着け、落ち着け……)


 深呼吸を繰り返し、顔を元に戻そうと心を落ち着かせる。



 

 次の方が来るまでになんとか落ち着きを取り戻すことができた。鏡を見ると顔の赤みも取れている。


「コンコン」

「どうぞー」


 ドアが開く。入ってきたのは、侍女をつれた赤髪赤目の女の子だった。


「ごきげんよう。わたくしの名前はミーナ=ミルキアーナ。ミルキアーナ男爵家の娘ですわ。10歳ですの。こちらは侍女のリンダ。これからよろしくお願いしますわ」


 入ってくるなり、女の子は不機嫌そうに言い放ち、そのまま出て行った。リンダさんが、俺に侮蔑の視線を向けて扉を閉める。俺は何も言えずに立ち尽くした。


(――いや待て。『お願い致しますわ』ってなんだ? 俺は何も聞いてないぞ。男爵令嬢だから雇われて当たり前とか思ってのんかな? クリス様とは大違いだ……まぁ、貴族令嬢のイメージそのままだったけど)


 当然雇うつもりはない。名簿のミーナ様の名前の横にバツ印をつける。その際、クリス様の名前の横に印がついていないことに気付き、慌てて丸印をつけた。

ミーナ様がクリス様の引き立て役みたいになってしまった……違うんです! ちゃんと理由があるんです! この辺の、アレン視点では書けなかった部分は、本編完結後に別視点で書こうと思います。

乞うご期待!

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