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171【家族との出会い】

 おばあちゃんに連れられて、王宮を後にする。その後は、俺がおばあちゃんをお店まで案内した。


「ふふ、孫と共に王都を歩く日がくるとはのう。人生、分からないもんじゃ」


 俺の隣を歩いているおばあちゃんはとても楽しそうにしている。そうして歩いていると、お店が見えてきた。


「あそこが俺のお店です」

「ほほう! あれがか……ユリはお店の中かの?」

「そうですね。お店で待ち合わせしてましたので」

「そうか……ふぅー……良し。それでは行こうかの」


 おばあちゃんは深呼吸して気持ちを落ち着けている。やはり、俺の家族と会うのは緊張するようだ。


 お店の入口に着き、扉に手をかける。


「開けますよ?」

「お、おう! 良いぞ!」


 俺は扉を開き、お店の中に入った。


「ユリ―! 帰ったよー!」

「お兄ちゃん! おかえりなさい! 大丈夫だ……った?」


 ユリは、店に入った俺を元気よく出迎えてくれたが、おばあちゃんに気付いた瞬間、固まってしまう。


「う、うそ……お母さん? ――ううん、違う! お母さんじゃない! 誰!?」


 ユリは瞬時に腰を下ろして、腰の剣に手をかけた。抜刀こそしていないものの、完全に臨戦態勢だ。


「待って、ユリ! この人は敵じゃないから! この人は母さんのお母さん、俺達にとっておばあちゃんにあたる人だよ」

「…………お母さんの……お母さん!?」


 状況を理解したユリは素っ頓狂な声を上げた。


「ふむ。わしの姿を見て、混乱するも、瞬時に冷静さを取り戻し、臨戦態勢を取れるとは……。さすがは、イリスの娘じゃわい。おお、挨拶が遅れてすまんの。わしは、ミリア=イリーガル。イリスの母じゃよ。よろしくの」

「え、あ、はい……。ユリ=クランフォードです。よろしくお願いします?」

 

 剣からは手を離したものの、まだどこか警戒した様子のユリが何とか返事を返す。


「大丈夫だよ。実は、裁判でちょっとピンチになったんだけど、おばあちゃんに助けてもらったんだ。もし、おばあちゃんが来てくれなかったら、強行手段を使うしかなかったよ」

「――!? そんなピンチだったの!? でも、簡単に弁明できる罪状だったんじゃなかったっけ?」

「弁明できればね。側室が裁判官だったんだけど、発言すら許されなかったんだ」

「え? …………馬鹿なの? 裁判で被告人に発言を許さないって……もしかして黒幕って側室?」

「んー、それはどうかな。その可能性もなくはないけど……ま、その辺の事は皆の所に帰ってから相談しよう。まずは、皆におばあちゃんを紹介したいんだ!」

「了解! それじゃ、一緒に行こう! おばあちゃん!」

「――! うむ! よろしく頼む!」


 ユリに『おばあちゃん』と呼んでもらえて、おばあちゃんも嬉しそうだ。


 次の瞬間、俺達はユリの『転移』により、支店の裏口に立っていた。


「……話には聞いていたが、本当に3人同時に『転移』させられるとは。流石はイリスの子じゃな。将来が楽しみじゃわい」


 おばあちゃんは初めての『転移』に驚きつつも、事前にユリの魔法について話しておいたおかげで、冷静さを保っている。


「ちょうどお昼の時間だね。誰か、休憩室にいるかな?」


 裏口から店内に入り、休憩室に向かう。休憩室では、クリス、マナ、バミューダ君、そして、ミーナ様が休んでいた。


「あ。お兄ちゃん! おかえり! ……で……す……」


 バミューダ君が、おばあちゃんを凝視する。バミューダ君の声につられて、俺の方を見た他の皆も、おばあちゃんを凝視していた。


「――!」

「……お義母様?」

「お、かあ、さん? ……です? ――! 違う! ……です! でも、敵意は感じない。……です」

「え、違うんですの? じゃ、じゃあお義母様のご姉妹とか?」

「……違います。あの方は、イリス様のお母様ですよ」

「「「――!?」」」


 皆が混乱する中、マナだけはいち早くおばあちゃんの正体に気付いたようだ。おばあちゃんの正体を、マナが皆に説明すると、皆驚いた表情をしていた。ただ、その驚きは、『おばあちゃんの正体に驚いた』というのと、『マナの口調に驚いた』というのが半分ずつといった様子だ。


「おお、おぬしはミルマウス家の娘じゃな。確か……マナと言ったかの。久しぶりじゃな」

「お久しぶりです、奥様。ですが……なぜこちらに?」

「ふふ。アレンにの、過去の事を話したんじゃが、それでも仲良くしてくれると言ってくれたのじゃ。それに家族を紹介してくれると言われたら来るしかないじゃろ」

「そうでしたか。それは良かったですね」

「うむ! ああ、細かい事は後程説明するが、おぬしらミルマウス家の者にはこれまで通り、クランフォード家の護衛を続けてもらう。だからそんな寂しそうな顔をするでないぞ」

「――!?」


 マナが驚いた様子で自分の顔に手を当てた。


「そ、そのような事は……」

「ん? ああ、護衛対象に好意を寄せるのはミルマウス家の教えに反するのじゃったな。まぁ、気にするな。我が孫娘も喜んでおるし、おぬしはこれまで通りでいてくれればよい」


 マナが反射的にユリを見ると、ユリは親指をぐっと上げて返事をする。――次の瞬間、マナがユリに抱き着いた。


「ユリピー!! 良かった! 良かったよー! わ、私! クビになってここを離れななきゃいけないかと……本当に良かったよー!」

「よしよし。マナピ落ち着いて。大丈夫。私とマナピはずっと友達だよ」

「わー! ユリピー! もう、大好き!」


 いつも以上にユリに抱き着いて甘えるマナ。


「………………そこまで仲良くしろとは言っておらんのじゃが」

 

 おばあちゃんの言葉は、興奮したマナには届かなかった。

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