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152【悪夢3 守る力】

残酷な描写があります。

苦手な方はご注意下さい。

「隊長?」


 侵入者達が頭の前半分を失った隊長に話しかけるが、当然返事はない。そして頭の前半分を失った隊長の身体はゆっくりと崩れ落ちた。


「な、なにが……」


 突然の事に、侵入者達は茫然と立ち尽くしている。


「――! 戻った! 戻ったよ!」


 隊長が死んだことで、ダンビュライトの効果が完全に切れたようだ。ユリの『回復』魔法の力強さが増した。


「……はい! 終わったよ!」

「ふぅ……ありがとう、ユリ。おかげで助かったよ。」

「ううん。本当は怪我する前に助けなきゃいけなかったのに……ごめんなさい」

「謝らないで。ユリは何も悪くない。悪いのは――」


 ドバン!


「――こいつらだ」


 ダンビュライトに手を伸ばそうとしていた侵入者の頭が吹き飛んだ。


「それが、魔法を封じてたんだろ? もう使わせないよ」

「ひぃ! ひゃー!」

「な……なんだよそれ! なんなんだよ!」

「逃げろ! 逃げるんだ!」

 

 侵入者達が玄関から逃げ出そうとする。


「逃がすわけないだろ?」


ドバン!


玄関に近かった侵入者の頭を吹き飛ばした。残りの侵入者は後2人だ。


「聞きたいことがたくさんあるんだ。勝手に帰ってもらっちゃ困るな」

「ひぃー!」

「この……化け物め!」


 俺から逃げられないと悟ったのか、侵入者達は玄関から逃げるのをやめて俺の方を向いて叫んだ。


「た、助けてくれ! 知ってることは何でも話す! だから命だけは! 頼む!」

「あ! おい! お前! 裏切る気か!」

「うるせぇ! 俺は助かりたいんだ!」

「馬鹿野郎! お前が裏切ったら、俺達まで――」 

「――黙れ!」

「「――!」」


 聞き苦しかったので、俺は侵入者(クズ)達に一喝した。


「俺の質問にだけ答えろ? いいな?」

「はい! 何でも聞いて――」

「――誰が貴様の言うことなど聞くか!」

「……はぁ」

 

 ドバン!


 雑音がうるさかったので、反抗した侵入者の左腕を吹き飛ばす。


「――ぐぁぁああ!!」

「5秒以内に黙らなければ、右腕を吹き飛ばすぞ」

「がぁ! ……ぐぅ……ぅぅ……」


 反抗的な侵入者は何とか痛みをこらえて、声を押し殺した。これで話が出来そうだ


「おい、お前」

「ひぃ! は、はい!」


 俺は心が折れている侵入者に話しかける。


「俺の質問に正直に答えるんだ。いいな?」

「わ、分かりました……」

「お前達は何者だ? 何の目的でここに来た?」

「そ、その……俺達は王宮に勤めている近衛兵です。ここに来たのは命令で……子供を2人さらってくる予定でした」

「……俺とユリの事か?」

「あ、いや! その……お、恐らく……」

「恐らく?」

「ひぃ! す、すみません! 正式な命令は隊長しか知らないんです! 俺は下っ端で……隊長の命令に従っていただけなんです! だからどうか! どうか慈悲を! お願――」


 ドバン!


 途中から命乞いに変わったので、侵入者の左腕を吹き飛ばす。


「ぎゃぁぁぁあああ!!!」

「質問にだけ答えろって言っただろ? お前も5秒以内に黙らなければ、右腕を吹き飛ばすからな」


 はっきりとそう言ったはずなのだが、左腕を吹き飛ばされたショックで聞いていないようだ。


「う、腕! 俺、腕! 痛い痛い痛い! ぐあぁぁああ! お、俺の腕がぁぁああ!!」

「……3……2……1……0」


 ドバン!


「ぎゃぁぁぁあああ!!! 腕! 腕が! 腕が無い! ああぁぁあああー!!」

「……はぁ。もういいか」


 痛みに耐えかねて転げまわる侵入者の頭に照準を合わせて引き金を引く。


 ドバン!


 これで侵入者は後一人だ。俺は最後の侵入者に話しかける


「さて、お前らは近衛兵って事は間違いないとしてだ……王宮の近衛兵に指示できる人間って限られてるよな? 誰の指示でこんなことをしたんだ?」

「……答える気はない。殺せ」


ドバン!

 

 俺は侵入者の右足を吹き飛ばした。


「ぎぃ! ぐぅ……!」

「もう一度聞く。誰の指示でこんなことをしたんだ?」

「ぐ……うぅ……。っは! はは。あっははは!」

「何がおかしい?」

「さっきそいつが言っただろ! 正式な命令は隊長しか知らん。誰からの指示かなんて俺は知らないさ。だから俺にこんなことをしても無駄さ。馬鹿めが。あっはははは!」

「……そうか」


 ドバン!


 俺は最後の侵入者の頭を吹き飛ばして、耳障りな笑い声を止めた。




「お疲れ様……大丈夫?」


 ユリが優しく話しかけてくれる。


「大丈夫だよ。お腹はユリが治してくれたしその後は何にもされてないから。見てたでしょ?」

「そうじゃなくて……人、いっぱい殺したでしょ?」

「ああ……うん。そうだね」

「大丈夫? ちゃんと自分を保ててる?」

「……大丈夫だよ。ちゃんと『人を殺したくない』って気持ちは残ってるから」


 大きな力を手に入れたからと言って、それに酔うようではお終いだ。


「それでも『やらなきゃいけない時にはやる』だけさ」

「お兄ちゃん……うん。そうだね」


 ようやく、ユリや母さんの言っていた事をちゃんと理解できた気がする。


「それにしても危なかったね。まさか魔法が無効化されるとは……」

「うん。私、『強化』が無いとあんなに弱いんだね。知らなかった……」

「でも、ユリのおかげで助かったよ。よく、魔法を使えたね。どうやったの?」


 拘束されたユリは体調を振りほどく時、間違いなく『強化』の魔法を使っていた。だが、ダンビュライトの効果は、母さんでも打ち破れないほど強力だったはずだ。


「えっとね。多分これのおかげだよ!」


 そう言って、ユリは首から下げている小袋を指差す。


「ダンビュライトのせいで魔力を感じなくなっちゃったんだけど、『お兄ちゃんを助けなきゃ!』って思ったらこれが暖かくなって。そしたら少しだけ魔力を感じたんだ」


(それ……黒曜石か!)


 マークさんが言っていた。『未加工のパワーストーンは所有者を選ぶ代わりに、認められれば、加工された物とは比べ物にならない効力を発揮する』と。


 どうやらユリの願いに黒曜石が応えてくれたようだ。


「そっか。それで、ユリの近くにいた俺も魔法が使えるようになったのか……」

「多分ね。だから、私達が助かったのは()()をくれたお兄ちゃんのおかげだよ。ありがとね!」


(いや、ユリが黒曜石に認められてたから助かったんだけどな……ま、こんなユリだから黒曜石に認められてるのかな)


「ふふ、それじゃお互い、お互いを守ったって事で」

「え? あ! そうだね! あはは」


 俺達が母さんにトレーニングをしてもらおうと決心した日、ユリは俺を守ると言い、俺はユリを守るために強くなると言った。お互い、お互いを失うのが怖かったのだ。


その後、母さんのトレーニングによって、ユリはどんどん強くなったが、俺は力を手に入れられず、ずっと守られていた。だが、ようやく俺もユリを守る力を手に入れられたようだ。

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