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144【魔道具開発14 『魔法銃』の完成】

「そんなことがあったの!?」


 サーカイル王子に王宮に呼び出された後、モーリス王子によって助けられた俺は特に何かをする気になれず、夕食までお店で時間をつぶした。そして、夕食の時に、ユリに今日あった事を話したのだ。


「うん。モーリス王子から『カミール王子とサーカイル王子に気を付けてくれ』って言われたよ。ユリも気を付けてね」

「うん、わかった……けど、私が王族に狙われるとか、正直、実感わかないよ」

「まぁ、それは俺もだよ。ほっといてくれって感じだよね」

「いや、お兄ちゃんは狙われてもおかしくないでしょ。これだけ色々開発してるんだから」

「うー……そう、かもしれないんだけどさ。とにかく、そういうわけだから身の安全のためにも、明日から銃の改良を頑張らないと!」

「それはそうだね! どういう改良をするの?」

「いくつかの機能を実装するつもり。最低でも『衝撃吸収』と『自動照準』の機能は欲しいな。『衝撃吸収』は『属性』で、『自動照準』は『操作』で何とかなると思う。後は『弾補充』を『転移』を使って実装できたらなって思ってる」

「……『衝撃吸収』……『自動照準』……『弾補充』……うん! なんか出来そう! 『自動照準』はお兄ちゃんの『鑑定』と組み合わせることになると思うけど出来ると思うよ!」


 付与する魔法のイメージが出来たのだろう。ユリが太鼓判を押してくれる。


「そう言ってもらえると心強いよ。それじゃ明日に備えて早めに寝よっか」

「うん!」


 気が急いてしまって寝付けるか心配だったのだが、色々あって疲れていたのだろう。思ったより早く寝付く事が出来た。




 そして、翌日、俺達は朝早くから魔導書貸出店に行き、実験室で魔法の付与を行う。


「弾を撃ち終わった後、実験室の保管庫から弾を『転移』させるイメージで……出来た! 今だよ! お兄ちゃん!」

「うん!」


 ユリがイメージしてくれた『転移』の魔法を銃に付与する。


「よし! 成功だ!」


 『衝撃吸収』、『自動照準』に続いて『弾補充』の機能も銃に付与出来た。


「さっそく、試し打ちしよう! マークさん、良いですか?」

「ええ、もちろんです。行きましょう」


 俺の実験室を出てマークさんの実験室に入る。


「それにしても、それだけの機能をよく付与できましたね。良い素材を使っているとはいえ、私では3つ以上の付与は出来なかったでしょう」

「そうなんですか?」

「ええ。アレンさんの付与の腕がいいのと、ユリさんの魔法のイメージが正確だからこそ、付与できたのでしょう。さぁ、着きましたよ」


 マークさんの実験室に置かれている試し打ち用の魔道具の前の白い線の上に立つ。


「試し打ち用の魔道具の四隅に印が書かれているのが見えますか?」


 マークさんに言われて的をよく見ると、試し打ち用の魔道具の四隅にバツ印が書かれているのが見えた。


「見えました。バツ印ですよね?」

「その通りです。せっかくですから、バツ印を狙って4連射してみてはいかがでしょう?」


 確かに、『衝撃吸収』、『自動照準』そして『弾補充』のテストをするのであれば、複数の的を連続で狙うべきだろう。 


「ありがとうございます! そうします!」


 白い線の上に立って、銃を構えた。


「ふー……行きます!」


 『鑑定』を発動し、左上のバツ印に狙いを定めようとする。すると、腕が勝手に銃の向きをわずかに変えた。


(これで照準があったって事かな? よし!)


 思い切って引き金を引く。


 ドバン!


 以前と同じように銃声が鳴り響くが、手に振動は来ない。


(『衝撃吸収』は問題なく機能してるな。これなら!)


 ドバン! ドバン! ドバン!


 右上、右下、左下と順番に狙いを定めて引き金を引く。3連射しても手に振動が来ることはなかった。


(撃ちやすい! 『弾補充』も問題なさそうだな。後は……)


 俺は以前より濃い赤に染まった試し打ち用の魔道具を確認する。すると、バツ印と寸分たがわぬ場所に俺が撃った弾がめり込んでいた。


(よし! 『自動照準』も完璧だ!)


 俺の後に続いてユリとマークさんも試し打ち用の魔道具を確認する。


「凄―い! あの距離からバツのど真ん中に命中させてる!」

「これは……本当にすごい武器を開発されましたね」

「ありがとうございます! 2人の協力のおかげです」

 

 実際、俺の知識だけでは1発撃つのがやっとの銃しか作れなかっただろう。ユリの魔法のイメージと、マークさんが提供してくれた素材があったからこそ、ここまでの銃が完成したのだ。


「これで銃は完成?」

「そうだね……これ以上、銃に機能を追加するのは難しいから、これで完成かな」


(欲を言えば『防音』機能も付けたかったけど、ちょっと無理そうだしな)


「まだ追加されたい機能があるのでしたら、弾の方に追加されてはいかがですか?」

「………………え?」

「この弾の素材は普通の金属なので、せいぜい1つか2つしか追加できないと思いますが、やってみる価値はあると思いますよ。どのような機能を追加されたいのですか?」


 同じ場所にある物に同じ付与を施すのはさほど手間ではない。保管庫に保管している弾であれば、1回の付与で全ての弾に魔法を付与出来るであろう。


「出来れば『防音』の機能を付与しようかなと。弾に付与しても問題ないですかね?」

「なるほど。撃つ時の音が大きいですもんよね。可能ですよ。ですが、わざわざ弾に『防音』機能を持たせて、撃つたびに『防音』機能を発動するのはもったいないと思います。音が気になるのでしたら、『防音』の魔道具を別で用意された方が良いでしょう」

「あ……」


 言われてみればその通りだった。それに、護身用の魔道具としては、大きな音が出た方が効果的な場面の方が多いだろう。


しかしだがせっかく弾にも魔法が付与できることに気付いたのだ。どうせなら弾にも魔法を付与したい。


(誘導弾にする? いや、『自動照準』があれば、誘導弾にする意味はないよな。後は……)


「……炸裂弾にする、とか」


 炸裂弾とは、中に火薬を入れた砲弾で普通の銃では撃つことが出来ない弾だ。だが、『属性』で弾に『銃から発射された後、着弾すると爆発する』機能を付与すれば、銃で炸裂弾が撃てるかもしれない。


「ユリ、弾に『銃から発射された後、着弾すると爆発する』機能を付与したいんだ。魔法のイメージ出来る?」

「え? あー……うん! 出来そうだよ」

「よし! それじゃ今装填されている弾に付与して試し打ちしてみよう!」

「分かった!」


 ユリと協力して弾に『銃から発射された後、着弾すると爆発する』機能を付与する。


「的に当たったら爆発する……イメージ出来たよ!」

「よし、付与も問題なく出来た! それじゃ試し打ちだ!」


 白い線の上に立ち、試し打ち用の魔道具を狙った。試し打ち用の魔道具はもう緑色に戻っている。


(狙いはど真ん中でいいよな。1発でさっきより濃い赤になるといいんだけど)


「いきます!」


 ドバン! バキッ!


(え?)


 銃声の後、何かが割れる音がした。慌てて銃を確認するが、壊れた様子はない。


「お、お兄ちゃん……」

「な、なんと……」


 ユリとマークさんが試し打ち用の魔道具を見て茫然と呟いていた。俺も試し打ち用の魔道具を見る


「……まじか」


 試し打ち用の魔道具は先ほどより濃い赤に変わっていた。しかし、それだけではない。衝撃を吸収するはずの試し打ち用の魔道具にひびが入っていたのだ。


「あ、ありえません。この魔道具は衝撃を吸収するのです。どのような威力の武器であっても、ひびを入れることなど不可能なはず……」


 こんなに動揺しているマークさんは初めて見た。それだけ信じられない光景なのだろう。


(護身用としては、適当に足元にでも撃ちめば、ビビってくれるだろうから、この方が良いか。でもこれ、もう銃じゃないな。『炸裂弾銃』……いや、『魔砲銃』って呼ぼう)


 銃では撃てないはずの炸裂弾を、完璧な照準で、何発でも撃てる銃。とてもじゃないが、ただの銃と呼べる代物ではない。まさに、魔法の銃と呼ぶにふさわしい武器だろう。


 こうして俺は、銃を魔法銃に改良したのだった。

ようやく『魔法銃』が完成しました。ここまで長かった……

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