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139【魔道具開発9 魔道具の販売】

「『銃』ですか。良い名ですね。ところで、アレンさん。その銃ですが、今後どうされるおつもりですか?」


 魔道具に銃と名付けた後、マークさんに聞かれた。


「どう、とは……どういう意味ですか?」

「アレンさん固有の武器として秘匿するのか、特許を取得して商品として販売されるのか、という意味です。売れば巨万の富が手に入ると思いますよ?」


 『銃』を売る。その発想はなかった。しかし……。


「売りません! こんな危険な魔道具、絶対に売りません」


 誰もが銃を手に入れられる社会。その結果どんな悲劇が生まれるのか。そんな事、考えたくもない。


「ええ。私もその方が良いと思います。銃は色々なパワーバランスを壊しかねない武器です。犯罪者が銃を使いだしたら今の治安部隊では対応出来ないでしょうからね」


 どんな道具も使う人次第……ではあるものの、危険な武器を開発した以上、それを広めないようにする責任はあるだろう。


「それでは、他の改良された魔道具はどうされますか?」

「他? あ! ……あまり考えていませんでした。ミッシェル様に相談してみます。多分、力になってくれると思うので」

「ミッシェル様……アナベーラ商会の会頭さんですね。なるほど、良い判断です」


 色々便利な商品を作れるとは思うが、価格設定や量産体制をどうすればいいのか、想像もつかない。フィリス工房では魔道具の生産は請け負っていないし、俺に『創作』の使い手の知り合いなんてい。色々と難しいだろう。


 その点、アナベーラ商会なら魔道具も取り扱っているし、問題なく量産できるだろう。従業員の派遣を依頼した手紙の返事が来次第、相談する事にした。


「さて、お二人とも、この後はどうされますか?」

「俺はもう少し、銃を改良しようと思います」

「私は魔導書の続きを読みます!」

「そうですか……あまり無理は良くないと思ったのですが、確かに夕食の時間まではまだ時間があります。それでは、無理しない範囲で頑張ってください」

「「はい!」」


 マークさんとユリと一緒に魔導書貸出店に戻った後、俺は1人で自分の実験室に入る。


(さとて、問題は『衝撃』と『照準』だな。これを何とかしないと)


 魔法の付与は、ユリが他の属性を修めてからやる予定だが、どんな魔法を付与するか、あらかじめ考えておいた方が良いだろう。そう思っていたのだが……。


(……ヤバい、何も思いつかない)


 『衝撃』は銃に『衝撃吸収』の『属性』を付与すれば対処できるだろう。だが、『照準』については、何をどうすればいいのか、見当もつかない。


(レーザーポイントで着弾点が分かるようにする? いや、遠距離狙撃で暗殺するとかならまだしも、近距離で戦っている時にレーザーポイントの光なんて見れられないし……。銃口の前に相手が来た時に、自動的に引き金が引かれるようにする? いや、それは誤射が怖すぎる。他には……思いつかない)


 結局、夕食の時間になり、マークさんが呼びに来るまで、いい案が思いつく事はなかった。




「『照準』、ですか?」


 夕食の席で、マークさんとユリに銃の改良案について聞いてみる。


「ええ。『照準』を合わせる、もしくは、『照準』がずれていても狙い通りに弾を命中させる方法を探しているんですが、なかなか見つからなくて……」

「なるほど……難しいですね。『放った矢を風で操り対象に命中させる』弓の魔道具ならありますが、銃の弾のスピードでは不可能でしょうし……うーん……――」

「――お兄ちゃんを操ったら?」

「……え?」

 

 ユリに言われた事が理解できずに聞きなおした。


「どういう事?」

「えっと……銃を撃つ時にお兄ちゃんの腕を操って狙い通りに場所に銃を向けるようにしたら? 銃をちゃんとまっすぐ持つ必要があるけど、それくらいは練習で何とかなるでしょ?」


 銃口を狙い通り定めるという事は考えたが、手に持った銃を動かす事が難しかったので、諦めたのだ。しかし自分を操って銃口を向けさせるだけなら出来るかもしれない。


「それ、いいかも……」

「ええ。『操作』の属性をユリさんが修めれば出来ると思います。もちろん、私は『操作』を修めていますが――」

「――私がやる!」

「との事なので、私が協力するのはやめておきましょう」

「分かりました。それじゃ、俺は先に他の魔道具の改良と店の準備を終わらせておきます。他にも色々協力して欲しい事あるから、ユリは全ての属性を修める事を優先して。銃の改良は、ユリが全ての属性を修めてからにしよう」


 『照準』と『衝撃吸収』の他にも追加したい特性がある。どうせなら、しっかり構成を練ってから付与を行いたい。


「分かった! 2ヶ月以内に全部修める!」

「うん! 待ってるよ」

「ふふふ。今でさえ強力な銃をさらに改良しますか。どうなるのか、2ヶ月後が楽しみですね」


 ユリがやる気に燃える横で、マークさんは楽しそうに笑っていた。




 翌日から、ユリは今まで以上に早起きして魔導書貸出店に向かうようになった。頑張りすぎないか心配だが、そこはマークさんがしっかり見張ってくれているので、信じて任せることにする。


 午前中にミッシェルさんとカートンさんから手紙の返事が届いた。この時間に届くという事は、2人共速達で手紙を出してくれたのだろう。中身を確認すると、2枚とも『ぜひとも派遣したい』と書かれていた。


 2人にお礼の手紙を書き、その日のうちに発送する。これで翌日には2人に手紙が届くだろう。ミッシェルさんへの手紙には、『新しい魔道具を開発したので、販売方法について相談したい』とも書いておいたので、魔道具の販売については、ミッシェルさんから返事が来てから考えればいい。そう考えて、その日は失敗作の改良作業に注力した。


 さらにその翌日。明日にはミッシェルさんから手紙の返事が届くだろうから、今日中に改良出来る物はしておこうと思っていた俺のもとに、ミッシェルさん本人がやって来た。

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