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138【魔道具開発8 銃の作成】

「おめでとうございます。さっそく試し打ちをされますか?」

「します!」

 

 俺は即答する。強度の問題が無くなった以上、早くこの武器を試してみたい。


「ふふふ。楽しみですね。それでは、私の実験室に来てください」


 マークさんに連れられて、俺()はマークさんの実験室に入る。


「うわ……ぐちゃぐちゃ。物が多すぎ……」

「……お恥ずかしい限りです。あまり見ないでください」


 マークさんの実験室に初めて入ったユリが失敗作の山を見て苦言を呈した。


(これでも、減ったんだけどな。……早めに俺の実験室も整理しよう)


 そんなことを考えている間に、マークさんは足早に部屋の隅に移動している。どうやらユリに、あまり失敗作の山を見せたくないようだ。


「えっと……確かこの辺に……ああ、ありました」


 マークさんは部屋の隅の壁に掛けられていた、アーチェリーの的のような形をした緑色の大きな魔道具を指差した。


「これは、私がその魔道具を開発してた時に、使う()()だった試し打ち用の魔道具です。衝撃を吸収し、跳弾を防ぎつつ、命中した時の威力を測定します。威力が高いと、魔道具の色が、緑から黄色、そして赤に変わります。ちなみに一般的な弓では、薄い黄色になるかどうか、だそうです。もし、その魔道具が完成しているなら、赤色になるかもしれませんね」


 マークさんは楽しそうに説明してくれたが、まるで『銃』の威力を知っているかの様な物言いだ。マークさんが転生者という事は無いと思うのだが、気になって聞いてみる。


「マークさんはこの魔道具の威力を知っているんですか?」

「いえ、厳密には知っているわけではありません。というのも、その魔道具は『古代の書物』に書かれていた武器を再現して作った物なんです。そして、『古代の書物』に書かれている通りの威力ならば、十分に赤くなるはずです。私では試し打ち用の魔道具まで弾を届かせる事すらできませんでしたが、アレンさんなら、あるいは。と、期待しているのですよ」


(それで、この魔道具の形が『銃』に似てるのか! それにしても、『古代の書物』……気になるな)


「その『古代の書物』はどこにあるんですか?」

「残念ながら、すでに焼失しています。愚かな争いのせいで……っと、そんな話より、今はその魔道具です。ここで試し打ちをされますか?」


 『古代の書物』についてもっと聞きたかったが、それよりも今はこの魔道具だ。


「はい! お願いします」

「分かりました。こちらへどうぞ」


 マークさんに試し打ち用の魔道具から20mほど離れた場所に案内される。そこには一本の白い線が引かれていた。


「ここから的までが20mです。『古代の書物』によると、その魔道具の有効な射程距離は25mほどらしいので、ここから試し打ち用の魔道具を狙ってください」


(拳銃の射程がそれぐらいだっけ? ここから、あの的を……って、意外と遠いな!)


 白い線の上に立って的を狙ってみると、試し打ち用の魔道具が小さく見える。


(外す事はないと思うけど……これ、相当練習しないと実戦で当たらないんじゃ……)


 実験で、大きな試し打ち用の魔道具でさえこれなのだ。実戦で、人に当てるとなったら、この比じゃない難易度だろう。


(まぁ、それについては後で考えるとして……今は試し打ちだ!)


 魔道具を両手で構えて、照準を試し打ち用の魔道具の中心に合わせる。


「撃ちます!」


 魔道具の引き金を引いた。


 ドバン!


「きゃあ!」


 実験室に銃声が鳴り響き、音に驚いたユリが悲鳴を上げる。俺の両腕は跳ね上がり、手の感覚は衝撃で無くなっていた。


(『銃』って撃つとこんなに反動が来るのか! 肘も肩も痛い……こんなの何発も打てないぞ。これも何とかしないと……)


 放心している俺にユリが話しかけてくる。


「び、びっくりしたー。その魔道具、凄い音がするんだね。まだ耳が『キーン』って言ってるよ……」

「音も凄いですが、それ以上に威力が凄いですね。『古代の書物』に書かれていた通りです」

 

 マークさんが試し打ち用の魔道具を見て呟く。つられて俺も見ると、試し打ち用の魔道具が真っ赤になっていた。


「既存のどんな武器を使っても、ここまで鮮やかな赤にはならないでしょう。この魔道具は世界最強の武器と言っても過言ではありません。……ところで、アレンさん、この魔道具の名前はどうされるのですか?」

「え? 名前、ですか?」

「ええ。『古代の書物』には『神の雷』とか『悪魔の視線』等と書かれていましたが、正式な名称については書かれていませんでした。ですので、開発者であるアレンさんが決めて頂けたらと」


 そう言えば、この魔道具を鑑定したら『名称:なし』となっていた。俺にとっては、『銃』だったが、この世界では、正式に名前が決まっているわけではない。


「『銃』です。この魔道具の名前は『銃』です」

「『銃』ですか……言いやすくていい名前ですね。それではアレンさん、『銃』を『鑑定』してみてください」

「はい!」


 マークさんに言われた通り、『銃』を『鑑定』してみる。


『名称:銃 状態:安定 所有者:アレン=クランフォード 特性:2つの機能を有している。1つ目、爆発の力で弾を飛ばす。2つ目、強度を高める』


「名称が『銃』になってます!」


 こうして俺は知識チート武器の代表格、『銃』を手に入れた。

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