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137【魔道具開発7 魔法の付与】

 マークさんも『強化』魔法を使えると分かったが、せっかくなので、『強化』の付与はユリに協力してもらう事にした。ユリが『強化』をかけた状態で俺が『創作』を使い、魔道具に魔法を付与するのだ。


「えっと……それじゃ、これに『強化』をかければいいの?」

「うん。魔道具の強度を『強化』してほしいんだ。出来そう?」

「強度の『強化』……うん! 出来そう!」


 ユリは少し考えると、確信をもって答えてくれる。


「よし、それじゃ『強化』をかけてみて」

「分かった! ――ふんっ!」


 力強い掛け声とともにユリが『強化』をかけてくれた。


「んぐ……ん……ぐう」


全身に力を入れているようで、歯を食いしばりながら魔法をかけ続けている。


(そんなに力む必要あるのかな?)


 魔道具は白い光を放っており、『強化』は問題なく発動しているようだ。俺も『創作』を発動し、ユリの魔法を魔道具に付与する。


(お! 魔道具に『強化』がかかってるのが、はっきり分かる! あれ、でもこれだと魔法と魔道具が……あ、なるほど! この二つを()()()()()()いいのか!)


 『創作』を発動した俺には、『強化』と魔道具の関係を理解することができた。『強化』は魔道具の周囲を覆ってはいるものの、その二つが反発しているように感じたのだ。今はユリの意思でこの二つがくっついているが、ユリが魔法を解除すれば、『強化』は魔道具から離れて行くだろう。


(この『強化』と魔道具を反発しないようにして……この二つをくっつければ……お、出来たぞ!)


 俺は唐突に理解した。


 魔法は、魔法使いの意思で対象物の周囲にいるが、その二つは反発しあっている。それらを『創作』で反発しないようにしてからくっつけることで、対象物の中に魔法が残り続ける。魔力が無ければ、その魔法は発動しないが、誰かが魔力を注げば、再び魔法が発動する。それが、魔道具なのだ。


(反発しないようにしてくっつける。これが魔道具の作り方か……あの反発は魔法や素材の相性で変わるのかな? 色々試してみたい!)


 俺が思考を巡らせていると、ユリの声が聞こえてくる。


「ぐ……ぐ、うう……お、兄ちゃん……ま、まだ?」


 ユリの声はとても苦しそうだった。おそらく、ずっと力んでいるせいだろう。


「ごめん! もう大丈夫! 成功したよ!」

「――っぷは! ……はぁ……はぁ……はぁ……お兄……ちゃん? ……はぁ……はぁ……終わった……なら……はぁ……はぁ……教えて、よ」


 疲労困憊のユリに怒られてしまった。


(……終わったのだいぶ前なんだけと……言わない方が良いかな?)


 決して保身のためではなく、ユリにショックを与えないためだ。断じて、ユリに怒られるのが怖いからではない。そんなことを考えていると、俺達を見守っていたマークさんが話しかけてきた。


「お二人ともお疲れさまでした。見事、『強化』の付与に成功したみたいですね。ですが、いくつか指摘する事があります。まず、ユリさん。『強化』魔法をかける際に、全身に力を入れる必要はありません。あれでは疲れてしまいますよ。それに、力んだところで、魔力は増えません。むしろ、心を穏やかにし、身体をリラックスさせた方が、強い魔力を発揮できるでしょう」

「う……はい。気を付けます」

「次にアレンさん。アレンさんは魔法の使用については特に問題ありません。魔道具の作り方についても、しっかりと理解されたようですね。アレンさんの問題点は協調性です」

「協調性……ですか?」

「ええ。魔道具への付与はとっくに終わっているのに、ユリさんに声をかけてあげないのは可哀想ですよ?」

「あ……」

「……え?」


 マークさんから指摘という名の爆弾が投げ込まれた。その意味を理解したユリがゆっくりとこちらを向く。


「……お兄ちゃん?」

「……はい」

「付与……とっくに終わってたの?」

「えっと……その……うん。……ごめん」

「………………」

「ゆ、ユリ?」

「……ケーキ」

「え?」

「キュリアス商会のケーキ3つで許してあげる」

「あ、はい! 後で買ってきます!」


 思わず敬語になってしまう。


「ふふふ、ユリさんは優しいですね」


 爆弾の行く末を見届けたマークさんはとても楽しそうだ。


「そんなことないですよー。付与が終わっている事に気づいていながら、私が魔法をかけ続けているのを黙って見ていたマークさんの明日のお昼ご飯を、どうしてやろうかなって考えていた所ですから」

「おや。では明日のお昼は、食べる前にアレンさんの分と『転移』で入れ替えておきましょう」

「え? それは……そんなことしたら……うぅ……」


 ユリの攻撃もどこ吹く風といった様子で受け流している。


(この人……いじわるっていうより、いたずら好きなんだな……)


「ふふふ。話が逸れてしまいましたが、指摘事項は以上です。アレンさん、魔道具を『鑑定』してみてください」

「……分かりました」


 マークさんに言われた通り、『鑑定』をすると、情報が頭に流れてきた。


『名称:なし 状態:安定 所有者:アレン=クランフォード 特性:2つの機能を有している。1つ目、爆発の力で弾を飛ばす。2つ目、強度を高める』


 以前書かれていた『強度が足りないため、暴発する危険性が高い』という特性はなく、『強度を高める』という特性が追加されている。


「成功しています。 強度も問題なさそうです」


 こうして俺()は、初めての魔法付与を成功させたのだ。

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