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127.【王都出店9 魔法の因果】

「さて、お二人とも晴れて魔法使いになれたわけですが……お二人に大事な話があります」


 今日一番の真剣なまなざしでマークさんが言った。


「このお店や魔導書の事を()()に口外してはいけません。いいですか? ()()にですよ?」

「わ、分かりました。でも、なんでですか?」

「もちろん、ご説明します。いいですか? 魔法の素質を持つものは、いずれ、()()()に魔導書に導かれます。その(ことわり)を破ると因果が壊れてしまうのです」


 俺は以前、母さんやシャムルさんが言っていたという『使える人はいずれ()()()に使えるようになる』という言葉を思いだした。


(あれってそういう意味だったのか……)


「因果が壊れるとどうなるのでしょうか?」

「その人に不幸が訪れます。どんな不幸かはわかりません。命を落とすことはないですが、病に倒れたり、大怪我を負ったりします。ああ、劣悪な環境で働き続ける事もありますよ。貴方達の義弟のように」

「え? ……バミューダ君の事ですか?」


 今更、マークさんがバミューダ君の事を知っている事には驚かない。だが、バミューダ君に不幸が訪れると聞いて黙ってはいられない。


「その通りです。おそらく、無理やり『強化』属性の使い方だけを教え込まれたのでしょう。稀にいるんですよ。身寄りのない者や奴隷に対して『強化』属性の使い方だけを教えて労働力にしている屑が」


 マークさんのこぶしは固く握りしめられている。


「あの……バミューダ君は大丈夫なのでしょうか?」

「ああ。失礼しました。不安にさせてしまいましたね。バミューダさんはもう大丈夫ですよ。イリスさんが上手く調整したようですね。身に着けていなかった『強化』魔法の基礎を、トレーニングによって身に着けさせたのでしょう。今は『強化』魔法()()()しか使えないでしょうが、いずれ魔導書に導かれて正しい『強化』魔法を修めると思いますよ」

「そう、ですか。良かった……」


(バミューダ君の能力は高いのに何でまともな職場で働けなかったのが分からなかったけど、そういう事か……。うちに面接に来てくれて本当に良かった)


「そういうわけですので、魔法の取得方法について聞かれたら、『使える人はいずれ()()()に使えるようになる』とだけ答えて、それ以上は話さないでください。お二人がわざと口外するとは思っていませんが、うっかり口を滑らせないように気を付けるように。いいですね?」

「分かりました! ユリもいいな?」

「もちろんだよ! 絶対言いません!」

「結構です。……さて! 今日の所はこれくらいにしましょうか。この店は年中無休ですので、いつでも来て下さいね。奥に実験室があるのでアレンさんが魔道具作成の実験をしたくなったら、いつでも使ってくださっていいですよ。ユリさんは他の魔導書にチャレンジしていきましょうね」

「ありがとうございます! 助かります」

「ありがとうございます! 頑張ります!」


 マークさんにお礼を言って、お店を後にする。帰り際、お店の看板を見ると、『国営 魔導書貸出店』と書かれていた。


「ユリ、あの看板……」

「うん。私も読める」


 入る時は何も書いていなかった。だが今ははっきりと見える。


(本当に魔法使いになれたんだ……)


 あふれ出る喜びの感情を抑えながら、ユリと二人でお店に戻った。




「おっとっと……ほっ! はっ! よっと!」


 店内でユリが掃除をしながら文字通り飛び回っている。


「届くかな? よっ……わ! 余裕で届いた!」


 片手で柱に捕まり、手の届く範囲を綺麗にした後、別の場所に飛び移って掃除をしていく。まだ自分の身体能力を把握しきれていないようで、棚に飛び乗ろうとした際は、勢い余って天井にぶつかりそうになったりしているものの、その動きは以前とは桁違いだ。2人で数日かけて行おうと思っていた掃除が、ものの数分で終わってしまった。


「強化魔法ってほんと凄いね! あんなに動き回ったのに全然疲れてないや!」


 余裕の表情を浮かべているユリは、汗1つかいていない。


「今ならお母さんにも勝てるかも!」

「いや、それは……どうなんだろ?」


 流石に母さんの方が強いとは思うが、ユリも母さんも超人的過ぎてどちらが強いのか分からなかった。


「帰ったらお母さんと模擬戦してみよう! 絶対驚くよ!」

「そうだね! 帰るまでまだまだ時間はある。店の準備は俺の方で進めるから、ユリは頑張って色々な属性を修めてくれ!」

「え? でも、お兄ちゃんだって魔法の実験したいでしょ? 私もお店の準備手伝うよ?」

「いや、俺はユリが色々な属性の魔法を使えるようになってから、実験を始めるよ。その方が効率いいしな。だから頑張って色々な属性の魔法を修めてくれ。作ってみたい魔道具が山ほどあるんだ!」


 元の世界にあった物を基にすれば、色々な魔道具が作れるだろう。トラックや飛行機を基に交通用の魔道具を、電話を基に通信用の魔道具を、銃を基に護身用の魔道具を、いや、それこそ元の世界じゃ空想上の物だった、瞬間移動の魔道具だって作れるかもしれない。そのためには、ユリに様々な属性を修めてもらう必要がある。


「そっか……うん! 分かった! 私頑張るね!」

「うん。お互い頑張ろう! さてと、そろそろ晩御飯の時間だけど……何食べたい?」

「メン料理!」


 どうやらユリも麺の魅力に取りつかれたらしい。


(こりゃしばらくメン料理生活になりそうだな。まぁ、俺も好きだからいいけど)


「よし、行こうか!」

「うん!」


 ユリと二人で、再びメン屋に向かう。


「あら、アレン君にユリちゃん。また来てくれたのかい?」

「お疲れ様です、ピリムさん。また来ちゃいました」

「お勧めのメン料理を教えてください! できればソバ以外で!」

「ははは! よしきた! 昼間はさっぱりのソバだったからね。夜はこってりのラーメンだ!」


ピリムさんに案内された席で待つこと数分、俺達の前にラーメンが運ばれてくる。


(これは! 俺が大好きな豚骨ラーメン……しかも、博多ラーメンか! ピリムさんのご先祖の転生者さん、本当にありがとう!)


「「いただきます!」」


細い麵がこってりとしたスープとよく合う。ラーメンを口に運ぶ手を止めることが出来ない。合間合間で水を飲むのだが、その水も美味しく感じる。


(美味しい博多ラーメンは水も美味しく感じさせるんだよな。いやほんとに美味しい!)


 その日食べたラーメンは、前世も含めて一番美味しかった。

 誠に申し訳ありません。筆者の操作ミスで、下書きデータを全て消してしまいました。

(本編の他に、ユリの産みの親の話、バミューダ君の昔の話、両親の出会いの話も消えてしまいました)


 大まかな内容は頭にありますので、毎日投稿は毎日続けて行く予定ですが、いずれ公開すると宣言していた過去の話につきましては、本編完結後、日を改めて公開させて頂きます。


 繰り返しとなりますが、本編の毎日投稿は続けて行きますのでこれからも応援、よろしくお願いします。

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