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126.【王都出店8 魔法の潜在能力】

ようやく伏線を回収できます!

 ユリが魔導書を読んでいる間に、俺はマークさんに聞いてみた。


「ユリは、そんなに凄い才能を秘めているんですか?」

「才能を()()()()()のではありません。正確には才能、つまり、潜在能力を()()()()()()()、と言うべきでしょう。幼い頃から受けている、石の加護によってね」

「……? すみません、石の加護って何ですか?」


 クリスの婚約者になって以降、宝石について色々勉強している。だが、石の加護という言葉は聞いたことが無い。


「あれの事です」


 マークさんはユリの首にかけられている小袋を指差した。俺がユリの誕生日にプレゼントした小袋だ。


「あれの中の石はアレンさんがユリさんにプレゼントした物ですね?」

「え、ええ。プレゼントしたというほどの物ではないんですが……ただ、綺麗なだけの道端に落ちていた石です」

「ふふふ。いい機会です。あれに向かって『鑑定』魔法を使ってみてください」

「――! はい! やってみます!」


(ぉぉおお! ついに魔法デビューだ! えっと……物が光を反射しているように、あの石も魔力を反射しているはずだから……石に視点を合わせて……お、小袋越しでもいけるみたいだ……それで、色以外の情報を見るように……お、おおお! 見える! 見えるぞ! いや、分かるというべきか!? これは――)


 石が反射している魔力を目で見て、脳が情報を読み取っていく。そして分かったのは、


『名称:黒曜石 状態:未加工 品質:上 所有者:ユリ=クランフォード』


 という内容だった。


「……って、黒曜石!?」


 俺は思わず叫んでしまう。黒曜石の石言葉は『摩訶不思議』や『集中力』、そして『潜在能力の開花』であり、水晶やダイヤモンドより、強力なパワーストーンとされている。あのサイズの黒曜石であれば、売れば8000万ガルドは下らないだろう。


「見えたようですね。ご存じかとは思いますが、黒曜石は、強力なパワーストーンです。ちなみに、未加工のパワーストーンが所有者を選ぶ事はご存じすか?」

「そうなんですか!?」


 確かに、読み取った情報の中に、『所有者:ユリ=クランフォード』という物があった。てっきり、ユリが持っているという意味かと思ったが、どうやらそれだけではないらしい。


「ええ。加工され、アクセサリーとなったパワーストーンであれば、誰もを所有者と認めますが、未加工のパワーストーンは所有者を選びます。所有者として認めさえされれば、加工された物とは比べ物にならない効力を発揮しますが、認められないとその効力が発揮されることはありません。そして、欲深い者、邪心を持つ者が所有者として認められる事は絶対にありません。ユリさんはあれが黒曜石であることを知りませんね?」

「多分ですが、知らないはずです」


 少なくとも、6歳だった頃に気付いたとは思えない。小袋から黒曜石を取り出すこともめったにないので、クリスやブリスタ子爵が気付いて教えるという事も無かったはずだ。


「それでも、ユリさんはあれを大事にしている。その心が黒曜石に気に入られたのでしょう。黒曜石がユリさんを所有者として認め、加護を与えています。その加護が、ユリさんの集中力を高め、守護し、潜在能力を開花させているのです。しかも、ユリさんはイリスさんのトレーニングも受けている。開花された潜在能力をさらに伸ばしているのです。本当に、将来が楽しみですね」


 マークさんが嬉しそうに笑った。


(そういえば、あの石(黒曜石)を身に着けるようになってからユリは明るくなったな。絵が上手になったのも、あの頃からだ。そっか……良かった)


 何となく気になって拾ったあの石(黒曜石)。それが、ユリの成長のきっかけになったのだとすれば、こんなに嬉しい事は無い。


「真実を知って現すのが、嫉妬や後悔ではなく、喜びの感情ですか。ふふふ。アレンさんの将来も楽しみですね」


(嫉妬? 後悔? 俺が? ……あ、そっか。あの石(黒曜石)を俺が持っていたら、俺の潜在能力が開花していたかもしれないのか)


 マークさんの呟きを聞いて、ようやく()()に思い至った。


(んー、まぁ潜在能力が開花してくれたら嬉しかったけど、それよりユリが明るい方が嬉しいしな。俺は地道に頑張ろう!)


 そんなことを考えていたら、ユリが手にしていた魔導書が『パタン』と音を立てて閉じた。


「っぷは! はぁー……はぁー……はぁー……」

「ユリ!」


 ユリが膝をついて頭を抱える。魔導書を落とすことはなかったが、かなりギリギリのようだ。


「ユリさん、こちらをどうぞ」


 マークさんがユリから魔導書を受け取り、先ほどと同じコップを差し出す。


「ふーふー……。ありがとうございます」


 少しして息が整ったユリが立ち上がろうとするが、足元がおぼつかない。


「ふふふ。無理しないでください」


 マークさんが『パチンッ!』と指を鳴らすと、一瞬でユリが床から椅子の上に移動した。目の前のテーブルには紅茶が置かれている。


「あ、ありがとうございます」

「お気になさらず。さて、ユリさん。この表紙が読めますか?」


 マークさんが手に持っている魔導書の表紙を指差してユリに聞いた。


「――! 見えます! 『万物の強め方』って書いてあります!」


 俺には何も見えないが、魔導書を読み切ったユリには見えるらしい。


「おめでとうございます。『強化』の属性を修めましね。これで、ユリさんも立派な魔法使いです」

「――! や、やった……お兄ちゃん! やったよ! 私も魔法使いになれたんだ!」


 店内にユリの歓声が響き渡る。


 マークさんが、『将来自分を超える魔法使いになる』と予見した者が、魔法使いとしての一歩を踏み出した瞬間だった。

 黒曜石の石言葉に『摩訶不思議』『集中力』『潜在能力の開花』があるのは事実ですが、パワーストーンの効力としては、『魔除け』『本当の自分と向き合う』『願いを叶える』等であり、パワーストーンの効力として『潜在能力の開花』があるというのは作者独自の解釈です。


 明確に誤った解釈ではないと思うのですが、もし、誤った解釈をしておりましたら、感想等で教えて頂けると助かります。

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