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123.【王都出店5 魔法について】

引き続き説明回です。

マークさんに魔法について説明していきます。

「まず、魔法を使うために必要な魔力について説明しますね。魔力とは得手不得手はありますが、本来誰もが持っている力です。足が速い人もいれば遅い人もいる。しかし、走れないという人はほとんどいないでしょう。同じように魔力が使えないという人はほとんどいません。お二人は何か魔道具を使用した経験はありますか? どのような魔道具でも使用するには魔力が必要なんです。でも、誰でも魔道具を使用できるでしょう? 実は、誰もが無意識のうちに魔力を使っているんですよ。汎用的な魔道具は、無意識下で流れている魔力で起動するように作られているんです」


 確かに、嘘発見器や録音の魔道具等は、誰が操作しても起動していた。


「そして、起動した魔道具は、周囲の魔力を集めて稼働します。ですので、魔道具は使い手を選ばず、誰でも使う事が出来るのです。ここまでよろしいですか?」


 俺とユリはうなずく。


「結構です。誰もが魔力を持っているという事は理解出来たかと思います。しかし、誰もが魔法使いなのかというとそうではありません。魔法使いか否か。その差は魔導書を読み切ることが出来るか否か、です」


(え?)


 俺は驚いてマークさんを見つめる。それに対し、マークさんはにっこりと微笑んだ。


「アレンさんは『魔道具の作り方』の表紙が読めるんですね?」

「は、はい、読めます。最初は読めなかったんですが、本を手に取ったら手から本が離れなくなって、勝手にページめくられて……気づいたら表紙に文字が浮かんでいました」

「それはアレンさんが『創作』の魔法を修めた証拠です。順番にご説明しますね」


 マークさんが紅茶を手に取り、優雅に口にする。俺達もつられて紅茶を口にした。予想より甘くて美味しい紅茶が身体に染み渡っていく。


 一息ついてから、マークさんが再び話し始める。


「魔法使いを目指すものはまず、魔導書を持つことによって己の適性を知ります。魔導書毎に属性が決められており、その属性に適性が無い者が魔導書を持っても何も起こりません。適性がある者が持つことによって、初めて魔導書は読む事を許し、最初のページを開きます。また、持ち主がそのページの内容を理解しない限り、ページがめくられることはありません。ちなみに、適性があっても、いきなり1冊読み切れる方はまずいません。半分も読めればいい方でしょうか。そこから1ページずつ内容を理解していき、長い時間をかけて1冊読み切ります。読み切る、つまり、魔導書の中身を全て理解して、初めて魔導書の表紙を読むことができるようになります。そして、1冊以上の魔導書の表紙が読めるものを『魔法使い』と呼ぶのです」


 マークさんの説明を聞きながら、俺は歓喜に震えていた。


(俺、あの魔道具の表紙が読めた……って事は!)


「つ、つまり俺は、魔法使いになれたということでしょうか?」

「ええ、その通りです。おめでとうございます! あなたは魔法使いとしての第一を踏み出したのです!」


 マークさんの言葉を、時間をかけて理解する。


 (う……うおおぉぉーーー!! 魔法使いになれた! あ、もしかして俺のチートは魔導書を簡単に読めるチートだったのか!? 神様ありがとう!!! 『創作』の属性か。あー、何となく今までわからなかった魔道具の作り方が分かるぞ。色々試してみたい!)


 俺はめちゃくちゃテンションが上がっていた。念願だった魔法使いにようやくなれたのだ。浮かれてしまうのも仕方がないだろう。そんな俺の横で、ユリがマークさんに尋ねた。


「あの……マークさん。私もお兄ちゃんが読んだ魔導書を読んでみてもいいでしょうか?」


(あ、しまった! 浮かれすぎた)


 慌てて俺もマークさんにお願いする。

 

「マークさん、ぜひお願いします。お金はお支払いしますので、妹にも魔導書を読ませてください」


 マークさんを見ると、にっこり微笑んでいた。


「もちろん、読んでくださってかまいませんよ。このお店に入れたということはユリさんにも何かしらの適正があるということですから」

「……え? そうなんですか?」

「言っていませんでしたが、このお店に入れる方は適性がある方のみです。でないと、魔法使いを夢見る大勢の方が押し寄せることになりますから。適性が無い者、または、まだ時期でない者がこの店を見ても、古びたお店にしか見えないでしょう」


 確かに魔導書を読み切るだけで魔法使いになれるのだから、大勢の人が押し寄せてきてもおかしくはない。


(ってあれ? 古びたお店?)


 妙な引っ掛かりを覚えたが、マークさんの話が続いていたため、意識を切り替える。


「中には、読める魔導書がないと分かったとたん、お店を破壊しようとする愚か者もおりますからね。適正と最低限の『マナー』がない方はお店に入れないようになっているんですよ」


 マークさんは微笑んでいたが、目が笑っていなかった。過去に何があっただろう。気になったが聞くことは出来なかった。


「私から見てもアレンさんとユリさんは()()な適性をお持ちのようだ。お時間の許す限り、魔導書を読んでいってください。ああ、それとお金は結構ですよ」

「「……え?」」


 このお店に来てから何度目かわからない驚きの声を上げてしまう。


「い、いいんですか?」

「ええ。アレンさんはもう読めるかと思いますが、このお店の名前は『国営 魔導書貸出店』です。適性を持つものが魔導書を読めずにいることは、国にとって損害ですからね。そのため、お店の費用は国が負担しています。遠慮せず、どんどん読んでください。理解が難しいページがありましたら、私に聞いてくださってかまいません。『新たな魔法使いを誕生させる』ことは私の一番の楽しみです。さぁ、頑張って適性ある全ての魔導書の表紙を読めるようになりましょう!」

「「ありがとうございます! 頑張ります!」」


 俺達はやる気に満ち溢れた声で同時に答えた。

明言しておきますと、アレンは知識チート以外のチートは持っていません。魔導書を簡単に読めるのは、知識チートの副産物です。

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