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107.【謁見4 ロイヤルワラント】

 とはいえ、モーリス王子を応援したくないわけではない。少なくともサーカイル王子かカミール王子が国王になったら、東側が大変なことになるのも事実だ。


(危ういと思ったら、フォローすればいいだけか。今のところ、順調なんだしな)


「分かりました。私達でお力になれるのでしたら、ご協力させて頂きます」

「本当か! 助かる」

「具体的には何をすればよろしいでしょうか?」

「そうだな……まずは、リバーシとチェスに私から『ロイヤルワラント』を与えよう。半年後に、今年の『ロイヤルワラント』の発表会が行われる。その時に私と親密であることをアピールしてくれ」

「……………………『ロイヤルワラント』……ですか?」


 自分の耳をこれほど疑ったのは人生で初めてだ。


『ロイヤルワラント』つまりは『王室御用達』とは、厳正な審査を通過した極めて品質の高いブランドや商品に対して王室から与えられる特別な『称号』であり、商人にとって、生涯の目標と言っても過言ではない。


「ああ。私がクランフォード商会に『ロイヤルワラント』を与えれば、私の紋章を商品に付けられるようになる。西側にアピールするにはもってこいだろう」


 『ロイヤルワラント』にはいくつか種類があり、発行者によって付けられる紋章が異なると聞いたことがある。モーリス王子が与えた『ロイヤルワラント』の紋章を付ければ、それは親密さのアピールになるだろう。


「……よろしいのですか?」

「もちろんだ。これまで遊具に対して『ロイヤルワラント』が与えられたことはない。貴族は娯楽に飢えているにも関わらず……だ。王族が遊具に興味が無かったのだろうな」


 『ロイヤルワラント』が与えられている商品としては、酒類やタバコ、ドレスや宝石などの贅沢品が多い。豪華で贅を尽くしている物に与えた方が、拍が付くからだ。


「ならばこそ、私が遊具に対して『ロイヤルワラント』を与える事は王家にとって新たな一歩となる。もちろん品質がしっかりしていなければ審査で落ちる可能性はあるが、そこは大丈夫だろ?」

「それは、大丈夫です」


 もともとリバーシもチェスも貴族向けの物を作成している。それらであれば、品質も大丈夫だろう。


「頼もしいな。では、1か月以内にリバーシとチェスを送ってくれ。それらを使って『ロイヤルワラント』の審査を行う。まぁ私が推すのだ。まず間違いなく通るがな」


 モーリス王子はニヤリと笑った。俺も笑い返したが、内心は不安が大きかった。


(モーリス王子が通るという以上通りはするだろうな。だけど、大丈夫か? 伝統とか歴史とか全部無視した行為だぞ? そりゃ好意的に受け止めてくれる人もいるだろうけど、それ以上に反感を買うような気が……)


 それでも、俺にとってこれ以上ないチャンスであることに間違いはない。である以上、やらないという選択肢はなかった。


「私から話したいことは以上だ。貴方から話したいことはあるか?」

「……一応お伺いしたいのですが、モーリス王子の目的は『国王になる』と『ざまぁ』と『ハーレム』なんですよね?」

「そうだな」

「『国王になる』と『ざまぁ』については理解したのですが、『ハーレム』についてはどうするつもりですか?」

「国王になれば、王妃の他に側室を持つことになる。その時に向けて何人かめぼしい女性を目に付けてはいるが……まぁ、それは後回しだな。まずは国王にならないと」

「なるほど……」

「貴方も商人なのだから、複数の妻を持つことはステータスになるのだろう? 婚約者はいるようだが、他に女性を作る気はないのか?」

「いえ、私には1人で十分です。複数の女性というのは……その……色々大変そうで……」

「そうか? まぁ、無理強いすることではないか……」


 正直、ハーレムの良さは分からないのだが、国王になるのであれば、子を産むのは義務だ。正妻たる王妃の他に側室を持つことも仕方ないのかもしれない。


「他に話したいことはあるか?」

「いえ、大丈夫です」

「そうか。では、防音の魔道具を解除する。ここから先は口調に気を付けてくれ」


 モーリス王子が机の上に手をかざすと光が消えた。


「それでは、母上のもとに戻るとしよう。行くぞ」

「はっ!」


 モーリス王子の後ろに続いて部屋を後にし、先ほどの部屋に戻る。こちらも机が光っているので、防音の魔道具を使用しているようだ。机に近づくと、防音の魔道具の効果範囲に入ったのか、いきなり声が聞こえてくる。


「――いっそのこと、シャルをアレンさんの婚約者にしてみてはどうかしら? もちろん正妻はブリスタ子爵令嬢で構わないわ」

「そんな……シャル様がいらっしゃるのにわたくしが正妻だなんて……恐れ多いです」

「アレンさんは商人なのだから、そんなこと気にする必要ないわ。それに、『貴女を側室にして、シャルを正妻に』なんてアレンさんは許さないでしょうしね」

「――! それは……その……」

「あら、否定しないのね」

「お母様、意地悪ですよ」

「あらあら」

「お兄ちゃん愛されてるなぁ」

「クリス様、顔が真っ赤……です」

「――! うぅ……」


 聞こえてきた言葉にまたしてもフリーズしてしまった。

『ロイヤルワラント』は正確には『英国王室御用達』ですが、本作の中では『(英国に限らず)王室が認めた商品』として使用しております。ご注意ください。

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