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101/214

101.【デート1 出発】

7/9 サブタイトルのみ修正しました。

 翌日、朝食後に()()()に着替えて部屋を出ると、部屋の前でユリが待ち伏せしていた。


(なんかデジャブだな)


「どうした? 今日はまともな服だろ?」

「……はぁ」

「???」


 盛大なため息をつかれてしまう。だが、今日の服装は問題ないはずだ。一応、バミューダ君にも確認したが、『いいと思う……です』と言ってくれた。


「お兄ちゃん……こっち来て」

「え? なんで?」

「いいから!」


 依然と同じように強引に部屋に連れ戻される。


「あれ? お兄ちゃん? どうしたの? ……です?」

「いや、なんかユリが――」

「――お兄ちゃん。なんでその服選んだの?」


 俺の言葉を遮り、ユリが問い詰めてきた。


「え? だって、()()()()()()()()()()()()()()? これなら問題ないと思って――」

「――前回と全く同じ服で行ってどうするの!」


 俺の服装は、前回、クリスとデートした時と同じ服装だ。これならユリのお墨付きだし、クリスも褒めてくれた服だから問題ないと思ったのだ。


「いやだって――」

「――お兄ちゃん、一応成功している商人でしょ! そんな人がデートに同じ服を着て行っちゃダメだよ! せめて少しは変えなきゃ!」

「で、でも……」


 確かに、貴族令嬢は夜会ごとに新しい服やドレスを着て行って実家が成功している事をアピールすると聞いたことがある。成功している商人として、そして、クリスの夫となる身としては、違う服装で行くべきだろう。しかし……。


「どうせ、自信が無くて何も変えるれなかっただけでしょ?」

「う……はい」


 図星だった。どこをどう変えればいいのか分からず、前回と全く同じ服を選んでしまったのだ。


「そういう時は私に相談すればいいじゃん! お兄ちゃんにそういうセンスが無いことはクリス様にバレてるんだから変にかっこつけないの!」

「うぐ……すみません……」


 思わず謝ってしまった。


「とりあえず、こっちに着替えて! 同じ紺系統だけどこっちの方が明るいから街中歩くならこっちの方がいいよ。シャツもこっちに着替える! クリス様の色のシャツを選ぶのは良いけど前回と同じじゃ効果薄いよ! クリス様の色の服をいっぱい持っている事をアピールしなきゃ!」

「は、はい!」


 最近服を買うときにクリスの色の服を買いがちな事もバレていたようだ。ユリは俺の持ち物の中から適切な服を選んでくれた。


「うん、その組み合わせでいいよ。最後に私からお兄ちゃんにプレゼント!」


 ユリが俺の耳元で囁く。


「クリス様、甘いものが大好きだけど、恥ずかしくて内緒にしてるんだって。3ブロック先にあるケーキ屋さんが気になってるみたいだよ」

「――!」


 予想以上に価値のあるプレゼントだった。


「頑張ってね」

「ありがとう。色々助かったよ」

「いえいえー。ちなみに私もケーキ気になるなぁ」

「……帰りに買ってきます」

「わーい!」


 コーディネート代と情報料だと思えば安いものだ。むしろこれからもお願いしたい。


「それじゃ行ってきます」

「いってらっしゃーい!」

「いってらっしゃい! ……です!」




 宿の入口に向かうと、クリスが、馬車の前で待っていた。


「ごめん! お待たせ」

「いえ、わたくしも今来たところですよ。今日()素敵な装いですね」


 ユリの指摘通り、前回と違う服にして良かった。クリスも前回とは異なり、水色に近いワンピースを着ている。唯一、胸のブローチだけは前回と同じものを付けていた。


「ありがとう。クリスも素敵な服だね。良く似合ってるよ」

「ありがとうございます。……それでは、行きましょうか」


そう言って、俺に手を差し伸べて、馬車にエスコートしようとするクリス。


「……え?」

「今日はわたくしがエスコートするんですから。さ、お手をどうぞ」


 俺は一瞬、その手を取るのを躊躇ってしまう。


(いいのかこれ!? 貴族令嬢にエスコートして()()()とか、ありえないだろ!? いやでも、クリスも楽しそうだし……まぁいい……のか?)


 自分が考え過ぎているのかもしれない。そう思い、俺はクリスの手を取った。


「それじゃあ、よろしくお願いします」

「はい。こちらへどうぞ」


 俺はクリスにエスコートされて馬車に乗る。


(エスコートされる側ってこんな感じなんだ)


 新鮮な気持ちでクリスが乗るのを待つ。乗ってくるクリスに手を差し伸べようとしたのだが、やんわりと断られてしまったのだ。


「お願いします」


 クリスが御者さんに声をかけると馬車が動き出した。


「ふふふ」

「クリス?」

「生まれて初めてエスコートしましたが、こういう気持ちになるんですね。なんか新鮮です」

「そうだね。俺も生まれて初めてエスコートされたけど、新鮮な気持ちになったよ」

「あら、お互い初めてだったんですね」

「そうみたいだね」

「ふふふ」

「ははは」


 前回のデートの時よりクリスとの距離を近くに感じる。何気ない会話が心地よい。


「そういえば、今日はどこにエスコートしてくれるの?」

「……そうですね。もう言ってしまっても良さそうです。わたくし達がむかっているのは……洋服屋さんです」

「…………………………………………え?」


 心地よかった空気が一瞬で霧散した。

デート回、1話で書ききれませんでした。

明日もお楽しみに!

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