短編 真夜中のおばさん
凍てつく寒さにげんなりする12月の下旬に俺は酒瓶を片手に1人で近所を散歩している。
俺は四季の中で冬が1番嫌いだ。何故なら、冬は人の"つめたさ"を肌で感じる季節だからた。
前からピットブルを連れた太ったおばさんが俺の横を通る。
「ひでー臭いだ……」
おばさんの横から臭い大便した奴の後にトイレに入った時の3倍の鼻奥をツンッと刺激する悪臭。
「なんだ、あのおばさん」
俺は振り返りおばさんとピットブルの後ろ姿を鼻を抓みながら眉間に皺を寄せ眺め、臭さを紛らわすために酒瓶をぐいと口に傾け一口飲む。
奥まった道の先の大通りに出て横断歩道を渡り目と鼻の先にある小さな公園のベンチにふんぞりかえって星を眺めながら一口飲む。
茂みの方からまた異臭がしておむろに立ち上がり恐る恐る異臭の方に近付きしゃがんで茂みを掻き分けた。
"何か"に人差し指を食い千切られた人間の手があった。俺は息を呑み込み地面に尻餅をつく。
「家に帰ろう……」
俺は立ち上がり酒瓶を飲み干して急ぎ足で元の道を戻っている途中、また前からおばさんとピットブルがこっちへやってくる。
街灯に照らされようやく犬の口周りに血が付いてるのが見えた。おばさんはギョロと俺の顔みて不気味な笑みを浮かべ立ち去った。
* * *
なんとか一軒屋の自宅に着いた俺は鍵でドアを開けて洗面所で手を洗い階段を上がり部屋のドアを開け机に酒瓶を置き、ベッドに滑り込み震えながら布団を被って強く目を閉じた。
急にベッドが左右に揺れ始め軀が宙に浮き、暫くしてからベッドに落下した。
それが2度続き、軀を起こし小窓のカーテンをそっと開けて外を見下ろすと家の横に約30匹のピットブルがおばさんを円を描く様に囲んで坐り、座禅の姿勢でおばさんが両手を広げ俺の顔をジッと見てきた。俺は咄嗟にカーテンを閉めた。軀が急に動かなくなり首を絞められた状態になり呻き声を上げることも出来なく徐々に意識が薄くなる。