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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年10月

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2017.10.11 水曜日 サキの日記

 facebookにアカウントを作って、平岸家についての記事を書いた。

 ここに来ることになった原因──事件のことははっきり書けなかったので『いじめがあって学校行けなくなった』くらいの表現にとどめておいて、平岸家に来てからの印象をいろいろ書いた。食器棚に並んでいる皿の多さや、壁に貼ってある歴代の卒業生の写真の多さから、かつてここなやたくさんの人がいたことがわかること。今はもう2人しか学生が泊まってなくて、秋倉高校がなくなったら平岸家も役目を終えること。この町に来てからのあれこれ──は多すぎてちょっとまとまらなかった。

 #平岸家っていうハッシュタグを使ってみた。卒業生の誰かが見てくれないかな、という期待を込めて。

 書いてみてわかったのは、私は、自分のいる場所のことをそんなにきちんと見ていなかったということ。気ままに書く日記と違って、『人に何かを伝えたい文章』に慣れていないということ。何かを描写しようとする度に手が止まって、どういう表現をしたらこの家の雰囲気を伝えられるのか、考え込んでしまう。

 平岸家に来た時は印象深かったいろんなことが、今は当たり前になってしまっていて、改めて人に紹介しようとした時、初めて見た時の印象を思い出してなんとかしようとする。

 ここに来て2年、私はいろいろ変わった。

 友達もできたし。

 上手く行かなかったけど、恋もした。

 平岸家が、本当の家のように(実際には親の代わりにはならないけど)世話をしてくれたおかげで、落ち着いて暮らすことができた。心も安定したし体調もよくなった。いろいろ思い出して辛いこともあるけど、ここの人と話していたら気が紛れる。

 インターネットの世界に戻るのは、私にとってはすごく勇気のいることだった。今も実は怖い。前の学校の人が中傷コメントを書き込んでくるんじゃないかとか(あかねは『容赦なくブロックすればいいのよ』と言っていた)。

 でも文章を書きたいし、人に読んでもらいたい。

 いつまでもネットを怖がっているわけにはいかない。

 佐加の強い勧めでinstagramも始めたけど、私には写真で主張できるような特技や趣味がないので、今の所、平岸ママが作ったマドレーヌの山の写真しか載せてない。芸能人のアカウントをちょっと見る程度。

 実は今、研究所のことを記事にしたくてウズウズしている。でも所長が嫌がっているので書けない。しばらくは平岸家の作りすぎ問題でも書こうかと思う。平岸ママに読まれたらまずいかもしれないけど。





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