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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年9月

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2017.9.29

ヨギナミがまたバイトを探し始めた。公務員試験終わったから時間ができたとか言って。佐加に『JKでいられる時間もう少ないんだから遊びなよ〜』と言われて『佐加はまだ受験あるんだから勉強しなさい』と言い返して、結局今日は佐加の家に行くことになったらしい。私も誘われたけど、本が読みたかったので断った。

 伊藤ちゃんにひすいこたろうの『あした死ぬかもよ?』という本を勧められた。修平が入院してる時にこの題名はシャレにならないからどうしたのかと思ったけど、伊藤ちゃんにも何か思う所はあるんだろう。 

 父が修二に聞いた話だと、今は容態が落ち着いてきているらしい。でもまだスマホの操作はできないんじゃないかと言っていた。スマホも使えないほど重症であることは間違いないわけだ。

 元々体が弱いのは知ってたけど、

 ここまでいくと『なんで?』って思う。

 保坂、奈良崎、勇気の3人は、学校の授業を動画に撮ったり板書をPDFにしたり、修平が元気になった時のために準備してる。先生方も協力的だけど、リモートで授業見たとしても、『学校の出席として認められるかどうか』はかなり厳しいそうだ。つまり、このままだと修平は留年してしまい、私達と一緒に卒業することができない。

 みんな、なんとかしたいと思ってる。

 でも、肝心の本人が何もできない状態だ。

 さっきの本に『誰になろうとしてるんですか?』という質問があって、『どう死ぬかはどう生きるかということ』『どう、ありのままの自分を受け入れるか』とか書いてあった。

 私のありのまま。それは、自分の考えや人生で起きたことを文章にせずにいられないということだ。これだけはどうしてもやめられそうにない。

『あなたが生きることで、幸せになる人はいますか?』

 という質問がちょっと痛い。そんな人いるだろうか?親?佐加とかヨギナミは私のことを友達だと思ってくれてるから、私が生きてたら幸せかな?あと所長。

 所長、私のこと好きだもんな。

 いつか『気持ちには応えられません』って言っちゃったことを少しだけ後悔してる。あんなこと言う必要なかったのに。所長、傷ついちゃったかな。

 でも、何にも態度を変えずに接してくれてる。

 所長、いい人すぎるな。

 たぶん私は、所長に甘えすぎているんだろうな。

 今死んだら後悔しそうなこと──平岸パパ風に言えば『まだ人生始まってもいないのに死にたくない!』だ。これからやりたいことがありすぎる。いろんな所へ行って、いろんなおいしいものを食べて、いろんなことを体験して、人生のあらゆることを文章にしたい。

 やっぱり文章なんだ。

 私にとって大事なことは。

 修平だって、やりたいことがたくさんあるだろう。でも、今は何もできない状態だ。今までウザいと思って冷たくしてしまったことを後悔してる。

 今度会ったら絶対優しくする。

 できることはやってあげたい。




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