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2017.9.20 水曜日 試験三日目 高谷修平
それは、試験最終日の、最後の時間のことだった。
急に視界がぐらっと動き、椅子に座っているのが辛くなった。なんとか倒れないよう、修平は机に腕をつけて支えようとした。
しかし、体はゆっくりと倒れ、床に落ちていった。
「高谷君、聞こえるかい?」
誰かの声がする。
「君は試験中に倒れたんだよ」
平坦な声が言った。
「残念だけど、君はもう東京の病院に戻らないといけないよ」
なんだって?
「ご両親が今こちらに向かっているから──」
嫌だ。まだ戻りたくない。
修平がうっすら目を開けると、色彩の全くない白い部屋で、近くに新道先生が立っていた。深い哀れみをたたえた目をして。
『修平君。もういいんです』
先生は低い声で言った。
『これ以上は君の体のためにならない』
嫌だ。
『残念ですが、仕方ありません』
嫌だ。
まだ諦めたくない──。
修平は必死に声を出そうとしたが、喉からは弱々しい息が漏れるだけだった。そのうちまた意識が遠のき、目の前が真っ暗になった。




