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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年9月

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2017.9.17 日曜日 サキの日記

 何もかもうまくいかない。

 明後日から試験なのに勉強に全然集中できない。結城さんのせいだ。いや、奈々子のせいなのか、それとも気にする自分が悪いのか、もうわからない。きっと何もかもが間違っているのだ。

 所長はしばらくご両親と旅行に行くそうで、研究所にはいなかった。『神戸の親』がどんな人か気になってたから、紹介してくれると思っていたのに。

 所長って本当に私のこと好きなの?

 奈々子を歌わせに(もうやめておこうと思ってたけど、休日に自分の部屋にじっとしているのも落ち着かないので)行ったら、また奈々子は結城さんと、()()()()使()()()いちゃいちゃしやがって、なんと今日は、一緒に映画まで見ていた。ウディ・アレンのパリのやつ。

 私の好きな映画なのに。

 ()()結城さんと見たかったのに!

 二人はもたれ合って映画を見ていた。私のことは一言も話題にしなかった。ただ、二人にしかわからない昔の話を続けていた。お互いを見る時の眼差しが優しくて、気味が悪い。だって、奈々子の顔は私だから。はたから見ていると、私が結城さんと付き合っているように見えるだろう。まるで悪い夢のように。

 札幌なんか嫌い。

 90年代も狸小路も嫌い。

 奈々子なんか大嫌いだ。

 生きてたら襲いかかってボコボコに殴ってたかもしれない。今だって出てきたら黒猫の杖で殴りたい。でも、それを察したのか、帰ってきてからは姿を見せない。

 結城さんはとても幸せそうだった。

 奈々子と映画見てた時。

 あんな安らいでいる顔は初めて見た。

 それが嫌だ。私には絶対見せない顔だから。

 私がやりたいことを全部奈々子が持っていってしまう。

 目の前に見せつけられる。

 もう耐えられない。

 所長に相談したいけど今はダメだ。ご両親と旅行中だから。私は困ったことがあると所長に相談するクセがついてしまっている。こんな時にいないなんてひどいとか、自分勝手なことを考えてる。

 こんな自分大嫌いだ。

 私は受験生だ。勉強しよう。明後日試験だし、もう結城さんのことも奈々子のことも考えたくない。どうせ私が高校を卒業してここを離れたら、あの二人も離れ離れだ。

 私は新しい人生を生きる。

 もうやだ。人のことばかり考えるのは。

 それとも私って実は自分のことしか考えてない?幽霊のために何かすべき?そういうのもう、嫌だ。

 こういう時はBBCの浄化力に期待しよう。英語だ。






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