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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年9月

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2017.9.13 水曜日 サキの日記

 夜、久しぶりに母から連絡が来た。10月のテレビ収録(すっかり忘れてた!)の業務連絡と、あと、急に何を反省したのか、


 今までかまってあげられなくてごめんね。


 みたいなのが長文で来た。


 旭ちゃんのことは言い訳に過ぎなくて、

 本当は子育てから逃げていただけかもしれない。

 自分の子が本当にまともに育つんだろうかって、

 自信がなくて。


 どういう意味だそれは。

 どうも、自分がろくな人間じゃないから、子供もろくな人間に育たないんじゃないかと心配していたということらしい。

 そんなの私に失礼だし、自分にも失礼だ。

 私はもう子供じゃないし、今さらかまわれてもウザいだけだから真面目に仕事してって言って、その後、『ちょっと冷たかったかな』と思って、『私がいないと、寂しい?』と聞いてみたら、


 いつも、

 隣にサキちゃんがいればいいのにって思ってたわ。


 と。何それ。今さら言われても。

 とりあえず10月に会えるから、その時ゆっくり話そうって話になって、今日のやりとりは終わった。

 今さら『そばにいればよかった』みたいなこと言われても。

 ちょっと遅くない?って思う。

 でも、母なりにカウンセリング受けたりして、今までのことを反省して、努力はしてるんだろう。それはわかってあげないと。

 でも何かモヤッとする。何だろう?




 学校ではまたいつもの体育のパターン、つまり、第1と第2が勝負に燃え(今日は卓球で、杉浦の圧勝。奴が喜んでいるのを見るのははっきり言って面白くない)私達第3はそれをまったりと見物して何もしてない。あかねなんか堂々とアニメ見てて、南先生も諦めているのか全然注意しない。勇気はまた動画撮っておもしろおかしく編集して、帰りに男子集めて爆笑してた。


 帰り、気がついたら林の道を歩いていた。つまり研究所に行って、所長と結城さんに会った。結城さんはテレビで欅坂46ばかり見てて、私のことは無視。


 神戸の両親が週末に来るから。


 と所長は言った。


 サキ君のことは知らせておいたから、

 気にせずに来るといいよ。


 と。

 親が来る。私が会っていいんだろうか。付き合っているわけじゃないのに何か誤解されないだろうか。

 猫と遊びたかったのにかま猫が見つからず、シュネーにも無視された。建物裏の割れ目も見に行ったけど、いなかった。

 所長は今からどんな料理を出すかとか、どこへ連れて行こうかとか、親をもてなすことで頭がいっぱい。試しにキーライムパイを作ったから食べてみてと言われた。おいしかった。所長ほんとに料理上手い。平岸ママといい勝負だと思うけど、それを言っちゃうと作り過ぎに火がついて大変なことになるから、平岸家ではパイの話はしなかった。


 夕食の時、修平がいなかった。また具合悪くなったらしい。今日は学校でも元気がなかった。『最近弱っているような気がする』とこぼしていた。新道は何してるんだろう?力を分けてるんじゃなかったのか?あの昭和生まれの役立たず。


 母とやり取りした後、バ──父にも『私がいなくて寂しい?』と送ってみた。

 私が間違っていた。


 おぉ〜娘よ!

 俺がいなくて寂しいのかァ〜!?

 今すぐ愛のキッスを送ってやるぞォー!!


 と、めっちゃキモい顔アップの画面にしてるキス写真を送ってきやがった!

 何だこれは!?ただのセクハラ画像やん!と言い返したら、スネて、


 どうせパパのことなんか何とも思ってないんだ……。


 みたいなグチグチした文をいくつも送ってきた。慰める気もしないのでスルーした。

 ああ、普通のお父さんが欲しい。

 無口で真面目なパパが。





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