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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年9月

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2023.9.8 金曜日 サキの日記

 奈々子は、私に、自分の分も生きてほしいと言った。自分ができなかったこと──大学へ行くこと、恋をすること、結婚して子供を持つこと、世界を旅すること。その他いろいろなこと──を全部やってほしいと言っていた。なんだか、親が子供に、自分ができなかったことを押しつけてるような感じだ。

 でも『自分でやれよ』とも言えない。奈々子はもう死んでいるし、私の体を使わないと何もできないし、かといってむやみに使われても困るし。

 私はあいかわらず結城さんと所長のことを考えて悩んでたんだけど、それも奈々子に言わせると、


 恋ができるなんてうらやましい。


 になるらしい。うっとおしいので黒猫の杖で追い払った。奈々子には未練がありすぎて、私が一生かけても解決しなさそうだ。

 初島め。なぜ奈々子を殺す必要があったんだ?

 全然わかんない。

 いろんなことの理不尽さにイラついて、今日は勉強する気になれなかった。


 人はみな、いずれ死ぬ。

 奈々子は、それが早すぎた。


 でも私だっていつどうなるかわからない。病気にならなくても事故で死ぬ可能性はある。こないだ北朝鮮がミサイル撃ってきたし、うっかり失敗してこのへんに落ちないとも限らない。

 人は、いつ死ぬか、わからない。

 だから後悔しないように生きたい。

 でも、何をすればいいのか?

 私は文章を書きたいけど、文章のネタを得るにはまず生きて何かしなきゃいけない。何か夢中になれるものが他にあればいいのに。でも、やる気も興味もない。

 今、いろんなことに考え疲れて、何もしたくない。

 結城さんのことも所長のことも幽霊のことも、

 全部投げ出したい。

 何もかも忘れて普通に楽しく高校生活送りたい。

 でもそんなことできない。

 明日土曜日だ。奈々子をレッスンに行かせないと。奈々子はもうレッスンはやめるって言ってたけど、やっぱり行かなきゃいけないような気がする。結城さんに会いたいし。

 ただ、所長と会うの最近気まずい。どう振る舞うのが正しいんだろう?

 そういえば夕食の時に修平が、


 明日札幌に行って、

 先生の奥さんに会いに行こうと思うんだけど。


 と言っていた。一緒に来ないって誘われたけど、新道に興味ないので断った。修平は新道になつきすぎだと思う。『いつか離れなきゃいけない』と言いながら仲良しでべったりだし。

 あー!幽霊早く成仏してほしい!もうやだ!




  

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