表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年9月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

936/1131

2023.9.6 水曜日 サキの日記

 今日は体育の代わりに保健の座学だった。でも、真面目に授業してたのは半分くらいで、残りは南先生との雑談タイムになっていた。主に佐加が、自分が見ている動画とか、使ってるアプリの話してた。南先生、みんなが普段何を見たり使ったりしているか、それとなく探っているような感じ。ちょっと嫌だなと思った。私も何使ってるか聞かれたのでヤフオクとフリマアプリの話をした。衝動買いしたコスメとかを売ってると言ったら、あかねに、


 親が金持ちだと無駄遣いできていいわね。


 と嫌味を言われた。

 保坂が自分が使っている作曲ソフトの話をしていたけど、何言ってんだかさっぱりわからなかった。南先生は見ておくといい動画をいくつか紹介していたけど、あまり面白そうなものはなかった。


 今日は佐加が『平岸家で勉強しよう』と言ったので、テレビの間に集まった。男子は杉浦の所。女子は平岸家。でもみんな勉強そっちのけで、


 結城さんとはどうなってるの?

 所長とはどうなってるの?


 みたいなことを質問しまくってきてうんざり。自分でもどうしていいかわからないのに他人にうまく答えられるはずがない。話題変えてよって言ったら今度は佐加が伊藤ちゃんに、


 カッパ振ったの?なんで?


 と聞き始めた。伊藤ちゃんは『ノーコメントです!』と頑なに発言を拒否。スマコンが『今日は勉強しに来たのよ』と言うと佐加が『あんた進学しないんだから勉強する必要ないじゃん。帰れば?』と冷たく言った。ヨギナミが『やめなよ』とつぶやいた。あかねは『自分の作品が海外進出する時のために』と英語のやばい表現ばかりをネット上から捜し出し、みんなにキャーキャー言われて嫌がられていた。


 夜、猫の動画を見ながらカクッとなっていた所に奈々子が現れ、また、


 創くんのこと気になる?


 と聞いてきた。しつこいな。


 あんたは自分が結城さんのこと好きだから、

 私を遠ざけたいだけでしょ?


 と言ったら、


 うん。それもある。


 とあっさり認めやがった。


 でもね、それよりも、創くんがあなたのことを本当に真面目に想っていて、いろいろ気を使ってくれてるでしょう?()()()()はあなたにまるで気づかいがなくて逃げてばっかり。創くんの方があなたを大切にしてくれるのは間違いないと思わない?


 そんなの言われなくてもわかっとるわ。

 でも、人の心ってそういう風にできてないじゃん。

 私が好きなのは結城さんなんだし。


 そっか、なら仕方ない。


 奈々子はため息みたいな言い方をしてから、


 私は、あなたが幸せになる所を見たいだけ。


 と言って、消えた。

 おい待て。まさかそれが未練なんじゃないだろうな?

 私が幸せにならないと、奈々子が成仏しないんだとしたら。

 結城さんと両思いになる可能性──すごく低そう。

 なんだかまた難題が増えてしまった。ベッドに倒れてもんもんと考え事をしていたら、ヨギナミが鍵を取りに来た。私は今奈々子にされた話をヨギナミに伝えた。


 私も、サキには所長さんの方が合ってると思うけどな。


 と言われた。


 でも、サキにはその気はないんでしょ?


 ない、とはっきり言えた。前までは。

 でも今はどうだろう?所長とまりえさんが仲良くしているとモヤモヤするし、いつか神戸に帰ってしまうと思うと悲しくなる。これは友情?それとももっと別なものになってしまっている?


 慌てて結論出さない方がいいよ。

 人の心って変わるから。

 卒業までゆっくり考えたら?


 ヨギナミはそう言って出ていった。

 卒業まで考える、か。でも、そんなギリギリになって大事なことに気づいても遅いんじゃないだろうか。

 そうだ。これは『大事なこと』なんだ。所長はただの友達じゃない。そこを超えた何かだ。たとえ恋愛はできなくても、何か特別なつながりがあるのだ。それは間違いない。

 明日、所長に会いに行こう。

 でも、何をどう説明したらいいんだろう?

 考えてもわからなさそう。今日はもう寝る。明日所長に会って、一緒に散歩できたら、何かいいことが思いつくかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ