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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年8月

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2017.8.30 水曜日 サキの日記

 何も特別なことは起きない日。先週も同じことを書いたような気がする。

 体育では杉浦が先週のリベンジ戦を第2グループに申し込み、結果また負けて、床に両手をついて「悔しいッ!」とか叫んで、また勇気がそれを動画に撮って──第3のうちらは、その全部をバカバカしいと思いながら見ていた。

 何も特別なことは起きなかった日。

 私の特別って何だろう?

 やっぱり結城さんかな。

 林の道の前で迷った。研究所に行った方がいいのかどうか。でも今日は行かなかった。

 帰って勉強した。私は受験生なんだからこれが正しい。

 でも何か、他に大切なことがあるような気がしてしまうのはなぜだろう?

 奈々子を呼んだら、


 創くんのこと気にしてるでしょ?


 と言ってきたので、黒猫の杖で追い払った。

 そうじゃない。所長はそういうのじゃない。

 でも、せっかくの秋倉の夏、もっと一緒に過ごせばよかったとも思う。

 もうすぐ8月も終わりだ。

 高校生最後の夏が、もうすぐ終わってしまう。

 人が真面目に勉強してるのに、佐加が面白い動画を見つけて知らせてきたり、スマコンから「今のあなたはカップの4よ」という意味わかんない占いが来たり、なぜか勇気がねこにシャーって言われる動画を送ってきたり(未だに仲良くなれないらしい。あのカフェのねことは)。

 みんな何を考えてるんだろう。

 楽しければいい?それとももっと深く何か考えてる?

 LINEやSNSに乗らない思考や感情が、人には存在すると思う。昔の人が本を読む時に『行間を読む』と言っていたようなものが。一見何の意味もないやりとりの間に、いろいろな感情が隠れている。「私を見て!」とか、「もっとかまって」とか「寂しい」とか、そんなものが。

 そんなこと考えてる場合じゃない。

 勉強しないと。





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