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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年7月

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2017.7.31 月曜日 河合先生への日誌 高条勇気

 同じ専門学校を目指している人たちとオンラインで話し合っています。お互いに作った動画を見せあっているのですが、レベルが高すぎて焦っています。みんな編集にめちゃめちゃ力を入れていて、僕は今まで何をやっていたんだろうと反省しました。音楽やダンスなど、特技を持っている人は強いです。自分でアニメやドラマを作っている人も多いです。僕は何を撮ればいいのか?今それで悩んでいます。岩保さんにインタビューした時みたいに、特別なことをやっている人を撮らせてもらえると助かるのですが、そんなすごい人にはめったに出会えないし、いたとしても、もう自分で発信しています。

 カメラマンになった方がいいんじゃないかと新橋さんに言われたことがあります。でも僕は、人に言われたとおりに撮るのは好きではないです。本当に興味があることを撮りたい。すばらしいものを見つけて記録したいのです。

 さっきカフェにヨギナミが来ました。杉浦のお母さんと一緒でした。ここ数日ずっとお母さんが入院している病院にいたそうで、休ませるために連れてこられたようです。ひどく疲れた様子で、話しかけてもほとんど反応しませんでした。コーヒーとケーキをおごってあげたのですが、食欲がないようでした。ばあちゃんと話していた内容からすると、ヨギナミのお母さんはもう長くないようです。

 ふと、人の最期の瞬間を撮りたいという邪念が生まれましたが、その考えはかき消しました。いくらなんでも不謹慎ですから。でも、ヨギナミを見ていると、落ち込んでいるにもかかわらず、どこか、他の人にはない人間性というか、まっとうな子だなあと思います。こんな時に言うのはおかしいかもしれませんが、身内のことを案じられるというだけで、ひどく人間的によいように見えるのです。

 僕は考えました。仲の悪い母が今死にかけていたら、こんなに心配できるだろうかと。自分にそんな人間味があるだろうかと。時々、自分が何も感じないことがおかしいような気にさせられるのです。みんなが楽しんだり悲しんだりしている時に、自分の心だけが動かない。感情が動いていないのに、不安だけは感じる。

 これはいったい何なんでしょうね。

 変なことを書いてすみません。

 ヨギナミのお母さんがよくなるといいのですが。





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