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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年7月

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2017.7.20 木曜日 サキの日記

 今日は進路面談だった。もう東京の私大をいくつか受けて、受かった所に行くと決めていた。でも、河合先生が、そのあいまいさが心配だと言った。


 大学に『行く』ことだけが目的だと、いざ大学生活が始まった時に目標がなくなって、長続きしないんじゃないか。


『入ってから何をするか』をもっと考えて選んだ方がいいと言われた。

 私のやりたいことといったら、書くことと、できればカントクみたいに劇団に関わること。演劇部でシナリオを書くとか。だから一応演劇部のある大学を選んでるし、夏休み中に見学に行くことにもなってる。先生は何を心配しているんだろう?中退?

 大学に行きながら文章を書く。今のところ、やりたいのとはそれしかない。それの何がいけないんだろう?

 

 図書室が開いていて、夏休みに読む本を選んだ。伊藤ちゃんにはティク・ナット・ハンの『禅的生活のすすめ』を出された。瞑想の仕方とか落ち着く参考になるからと。私ってやっぱり落ち着かない人に見えてんのかな?あと、ヨギナミが最近読んでて気になったので、ジェーン・オースティンを2冊。もう一回読み直したいと思ったので、チクセントミハイの『クリエイティビティ』もまた借りた。あと、なんとなく見つけた宇野千代の『私の文学的回想記』も借りた。昔、男が強かった時代に文章を書いていた女の人の本はやっぱ気になる。

 一生、本だけ読みながらのんびり暮らせたらいいのに、と思ったりもする。でもそれだけじゃきっと退屈するだろう。それに、大学行ってる間はともかく、卒業したら、さすがに親に生活費出してもらうわけにはいかない。自分で収入を得ないと。

 働きたくないな。

 でもネットで稼ぐ能力はない。

 動画嫌いだし(見るのはともかく、自分が出るのはもう嫌だ)。

 借りてきた宇野千代の本めくってたら、

『男と女の間には、真の友情は成立たないものです』

 と書いてあった。多少恋みたいな気持ちがないと成り立たないと。

 そんなことない──と思ってたんだけどな。

 所長は私に恋をしているらしい。しかもかなり真剣に。でも私にはそういう気持ちはない。

 今だって気になるのは結城さんだ。明日会ったら何と言うだろう?学校祭で歌わせたのに奈々子が消えなかったことをどう思うだろう?何か次の手を考えてくれる?それが奈々子を求めてるとかだったら私はどうしたらいいんだろう?

 なんか緊張してきた。明日が楽しみだけどけっこう怖い。

 終業式だ。夏休みも始まる。

 どうしよう。私は何をすれば?今日眠れる?




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