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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年7月

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2017.7.16 日曜日 サキの日記

 学校祭のリハーサル。奈々子が出てきてステージに立った。しかし、保坂がゾンビメイクのまま伴奏していたのが気になってしかたなかった(奈々子はあまり気にしてないみたいだったけど)。佐加と藤木が衣装とメイクを張り切りすぎたせいで、ホンナラ組が本物のゾンビみたいになり、近寄ってくるとめっちゃ怖い。伊藤ちゃんが本気で逃げ、ホンナラ組はおもしろがって追いかけ回し、スマコンが『伊藤を怖がらせるのはおやめなさい!』と叫んでいた。

 みんな明日のことを考えてワクワクしてるのに、私一人元気が出ない。奈々子のせいもあるし、結城さんが来てくれなさそうなことも原因だけどそれだけじゃない。あの、みんな楽しそうにしてる中でふと落ちてしまう孤独みたいなものに、私は一人ではまっていた。みんなと一緒にいるのに、一人でいるような感覚。なぜなのかはわからない。

 ヨギナミはレストランの人(なんか偉そうなスーツの人)とメニューや配膳のチェックをしていた。私は午前中レストランを手伝って、午後は奈々子に歌わせ、その後は休むことにした。

 奈々子は消えるだろうか。

 それとも、ずっと私に取りついたままなのだろうか。

 一生奈々子と過ごす?あるいは、乗っ取られる?

 不安になってきた。いつか誰かと結婚することになっても、奈々子がついてくるんだろうか。いや、私は結婚なんかできない。ノノバンがネットに嘘をばらまいたから──また嫌なことを思い出してしまった。

 私は佐加にくっついて、クッキー柄のテーブルやロールケーキのソファーを見て回り、明日の来客はどうなるだろうみたいな話をした。最後の学校祭だからかなり昔の卒業生も来ると思うと佐加は言った。『ジジババだらけになるかも』とか。

 佐加はいつでも明るい。生理前に機嫌悪くてブチ切れることあるけど。この明るさの半分でも私にあったらなと思う。

 秋倉の人は、無邪気だ。

 悪いことやつらいことなんて知らなさそう。

 いや、本当はそれぞれにいろいろあるんだろうけど、話しているとそういう風に見えない。

 不幸を乗り越える方法が知りたい。

 そうしないと楽しく生きられない。


 明日のために今日は早めに寝ることにした。でも、緊張して眠れないかも。なんで、歌うのは奈々子なのに私が緊張しなきゃいけないんだ。待ち時間だけ押し付けられてる感じがしてすごく嫌だ。

 あと、平岸ママが『明日売る』と言ってお菓子を作りまくっているのも気になる。そんな話、学校では誰もしてなかったけど?誰かに相談した方がいいのかと思ったが、告げ口みたいで誰にも知らせられない。どうしよう。




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