2017.7.7 金曜日 ヨギナミ
放課後、ヨギナミと佐加は2人で秋倉町内を回り、学校祭のポスターを貼らせてもらったり、プログラムを配って歩いたりした。秋倉高校の学校祭は、町の人も楽しみにしているので、みな好意的に対応してくれた。『今年で終わりなんてさびしいわぁ』と言う人もかなりいた。
しかし、スーパーの近くで、
あんた、与儀さんとこの子でしょ。
と、けげんな顔で話しかけてきたおばさんがいた。
はい、そうです。
ヨギナミは答えた。すると、
お母さんまだ入院してるの?
意地悪な声で聞いてきた。
はい。
悪いことをするからそうなるのよ。
おばさんはそう言って去ろうとした。しかし、
おい待てコラテメーこのババア!!
佐加が怒って怒鳴りながら追いかけようとしたので、ヨギナミは慌てて腕をつかんで止めた。おばさんは走って逃げていった。
あんなのは気にしなくていいから。
通りがかった別なおばさんが話しかけてきた。そして、
これ、あげる。
と、ルマンドの袋を佐加に押しつけていなくなった。しかし、それくらいでは佐加の怒りはおさまらなかった。
あのババア、自分が正しいと思い込んでるんだって!
帰り道で、佐加は文句を言い続けた。
よく言うじゃん。『自分が正しいと思い込んでいる人ほどやっかいなものはない』ってさ〜。
平気で人を傷つけるようなことして、しかも自分は『いいことをした』と思い込んでんの。怖くね?
ホソマユにもそういうとこあるよね。
杉浦の悪口になりそうだったので、ヨギナミは話題を変えたかった。しかし、佐加はさっきのおばさんの服のセンスのなさをけなし始めたので、そのまま言わせておくことにした。
帰ってからヨギナミは落ち込んだ。最近町の人に会わなかったから忘れていた。自分と母はこの町ではつまはじきにされていたのだ。
やっぱり早く町を出よう。
とヨギナミは思った。今なら母も反対できないだろう。それを思うと悲しくなったが、他に選択肢はないように思えた。
ヨギナミは勉強を始めた。未来のために。




