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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年11月

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2015.11.11 研究所


 キャアアアアアアア!!!





 二階から、ホラー映画のような悲鳴が聞こえた。

 一階にいた久方創は、声に驚いて本を持ったまま一瞬固まったが、次の瞬間にはニヤニヤと笑っていた。




 ガかな、シミかな。カメムシみたいなやつかな。それとも壁の割れ目から入った小動物か……。



 助手の嫌いなものをいろいろ想像していると、本人がものすごい勢いで走る音が廊下から聞こえ……玄関の方向に消えた。



 そんなに怖いものが出たのか。



 久方は好奇心から二階に上がった。助手の部屋のドアが開けっぱなしになっているのに気がついた。

中に入ると、ピアノのちょうど真上から垂れ下がる真っ黒な……蜘蛛。しかも、今まで見た中で一番大きい。

 虫かごに入れて巣をはるのを観察しようかとも思ったが、適切なサイズの容器が手元にないし、何より後でパニクった助手に金切り声で叫ばれまくってもうるさくてたまらない。

 久方はピアノの上から楽譜を取ると、蜘蛛を引っかけて乗せ、窓を開けて外に投げた。糸が残っている楽譜はそのままピアノに戻した。助手が帰ってきてこれを見たときの反応を想像すると、笑いが止まらない。


 助手の部屋には、ピアノと楽譜の棚、服がかけてあるハンガーラック、それくらいしか物がない。

 本人がいないうちに何かないか探ろうとも思ったが、やめた。助手については、ピアニストのなりぞこないで性格が悪いということしか、久方は知らない。それ以上知りたいとも思わない。



 一階に戻ると、ポット君がまたコーヒーいる?と聞いてきた。今日はもう三度目だ。言われるまで聞かなくていいと教えるべきだろうか?でも、相手から来てくれたほうが楽なことも多い。

 久方は自分から動くのが苦手である。


 それにしても、助手はどこまで逃げたのだろう。逃げれば蜘蛛は消えるとでも思っているのだろうか。普段は偉そうに『現実にちゃんと向き合え』とか説教してくるくせに……。




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