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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年4月

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2017.4.14 金曜日 河合先生への日誌 杉浦涼

 我々もとうとう3年になった。受験勉強に本腰を入れなければなるまい。

 しかし、休息は大事です。今日は今季初の音楽の授業でしたが、小うるさい新橋さんが美術に行き、代わりに高条が入ってきた。動画に使える音楽を知りたいのだそうです。意欲があるのは素晴らしいが、音楽の好みはどうも浅くていただけない。部分しか聴かないのです。『ここのフレーズは使える』『この部分は聞いたことがある』そればかりです。交響曲というのは、全体で一つの世界観をなしていると僕は考える。ゆえに、部分だけを切り取って、そこだけで曲を理解したなどと思ってもらっては困るのです。高条だけではない。どうも最近の人々は、曲や作曲者への敬意が足りない。いかなる天才といえども作品を一つ作るにはそこに秘められた苦労、苦悩があるわけです。それをまるで使い捨ての消耗品のように扱うのはどうか。

 あかねさんは最近創作の壁にぶち当たって機嫌が悪いらしい。僕に向かって『あんたの話は偉そうだけど中身がない』などと言う。単なる八つ当たりでしょう。怪しげなマンガを描き続けて、そろそろ行き詰まっているのでしょう。そろそろ真面目な題材を扱ったらどうかと僕は提案しました。手塚治虫のような壮大なテーマを考えてはと。すると、どういう頭の造りをしているのか全く理解できないのですが、

『宇宙を支配しているイケメンの神が銀河中から美少年を集めてハーレムを作ったがそこで美少年どうしが恋をしてしまい、神が怒って星を分裂──』

 ま、くだらないのでこれ以上書くことはありますまい。とにかく、あかねさんは僕のおかげで何か思いついたらしい。それについてクラスのみんなが『なんてことしてくれたんだ!』『お前のせいだ!』と責め立てられたが、僕は悪くない。あかねさんが何でもそちらにねじ曲げる脳を持ってしまっただけです。非常に不幸なことですが、僕にはどうしようもない。

 クラスの受験組を集めて勉強会を計画中です。伊藤さんは図書室でやればよいと言っています。高谷も乗り気です。しかし、新橋さんはどうも理由なく僕を毛嫌いしているらしく、勉強会も『絶対出ない!』と言っています。まあ、せいぜい一人で勉強して行き詰まればいい。そのうち自分から、みんなと一緒に勉強したいと言ってくるでしょう。




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