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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年3月

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2017.3.17 金曜日 サキの日記

 学校の窓から妙子が浮かび上がってきて、外に引きずり落とされる夢を見た。なので窓に近づけなかった。佐加達にこの話したらめっちゃ笑われた。

 今日は終業式だった。

 どうしよう。2年生終わっちゃった。

 まだ何もしてないのに。

 今日は真面目に勉強しようと思った。教室に居残って。しかし、杉浦が塾の開催を宣言。クラス全員が一斉に逃げた。私も逃げたけどヨギナミに捕まった。佐加も仕方なく来た。嫌だったけど、ちょっとだけ好奇心がわいて、杉浦の家に行くことになった。

 杉浦め、なんであんなに本を持ってるんだ!?

 奴の家は、私の理想の古本屋みたいだった。どこもかしこも本だらけ。壁という壁は本棚。床にも本が入ったダンボールや木箱。廊下の両側も本棚。ここにいるときに地震が起きたら間違いなく死ぬだろうと思わずにいられない。ドンキホーテを超える物の密度。ドンキの商品が全部本だったらこんな感じだろう。家自体も昭和初期に建てられた古い造りで、柱や床、わずかに見える壁、全てが歴史を感じさせる色をしている。

 許せない。杉浦ごときがこんなノスタルジックな家に住んでるのは。しかも、本の数すごいねって言ったらドヤ顔されたし。偉いのは本であってお前ではないと言いたい。

 スギママがおにぎりを作っておいてくれたので、それをお昼に食べた。それから、本棚に囲まれた居間(ほとんど原型をとどめていない)で、本にぶつかりながら勉強を始めた。しかし、杉浦の余計な解説(というより単なる自論の羅列)がうるさくて、やりたい英語に集中できない。しかも、


 佐加と新橋さんは、明日数学の補習だろう?

 数学をやった方がいいんじゃないのかね。


 とか言いやがったので、佐加と2人で『ホソマユうざい!』を連呼した。

 2時半頃、『バイトがある』と言ってヨギナミが抜けた。私も杉浦のどうでもいい演説に耐えられなくなってきたので(昼からずーっとしゃべりつづけていた)、勇気に助けを求め、『カフェに来ない?』というLINEを杉浦に見せつけて脱出した。それからカフェで勇気に会い、杉浦の悪口を言いまくった。

 勇気は私の話を聞いてくれる。

 でもたぶん好きじゃない。

 どうしよう。今日も『別れたい』って言えなかった。2人でいると松井マスターとか店の客もこちらの様子をうかがっているし、もう町中に知れ渡ってるのでは?と思うことがある。どうしよう、町の人からの目を思うと余計に言いだしずらい。『実は好きでもないのに付き合ってました』なんて。

 夕食の後もBBCの音声を聴き流してそのことばかり考えていた。だめだ、この問題を解決しないと他のことに集中できない。

 でも言い出せない。どうしたらいいんだ。




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