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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年2月

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2017.2.25 土曜日 サキの日記

 人生初、補習。数学の。せっかくの週末が。


 先生だって休めないんだから文句言うな〜。


 と言われながら、復習のプリントをさせられる。佐加は問題を見ながら『なにこれ、わかんね』を繰り返すし、奈良崎は先生が目の前にいても堂々と寝てるし。

 始まる前に、佐加が、


 終わったら3人で遊び行かね?


 と言ってて、実はそのことしか考えてなかった。やる気の全くない奈良崎のせいでプリントの終了が大幅に遅れ、私達は昼のバスにぎりぎりで飛び乗って、別な町にある店に行った。貝を使ったカレーが有名な所だ。佐加が住んでる浜よりも大きな港町で、海産物を使った飲食店がたくさん並んでる。

 せっかく観光地みたいな所に来てるのに、私の頭は別なことでいっぱいだった。勇気と付き合っていていいんだろうかとか、それで思い出してしまった昔のこととか。結城さんや所長はどうしているかなとか。

 佐加と奈良崎はずーっとファッションとか、アイドルの話をしていた。2人ともファッション業界を目指してて話が合うみたいだ。私は服にもアイドルにも興味がないので、お店のメニュー表をぼーっと見ながら、結城さんが好きそうなものはないかなと考えていた。

 せっかく友達と一緒にいるのに、関係ないことばかり考えてしまう。でも、


 奈良崎さー、そろそろ伊藤ちゃんに告ったら?


 と佐加が言い出した時、意識が現実に引き戻された。奈良崎が(あと、スマコンも)伊藤ちゃんのことが好きなのはクラス全員が知ってる。ただ、その伊藤ちゃんは誰にも興味なさそうだった──修平が来るまでは。

 奈良崎は『伊藤ちゃんが嫌がりそうだから』告白する気はないと言った。そしたら佐加が(私も)『え〜!?』ってなって、どうやってカッパを蹴散らして奈良崎の恋を成就させるかで話が盛り上がった。


 カッパさ〜、押しが強いから、

 伊藤ちゃんも避けにくいんじゃね?

 いっつも図書室にいるしさ〜。

 いつの間にか図書委員になってるしさ〜。


 カッパを図書室に行かせなければいいのか、よし。

 私と佐加は、奈良崎が止めるのも聞かず、カッパを図書室から遠ざける計画を立てた。私は幽霊がらみで相談することがあるから、放課後はそれでおびき出すしかない。実際聞きたいこともあるし。

 修平は幽霊達についてどれだけ知っているのか。

 かなり調べてそうだし。

 でも明日も補習だ。その間にまた修平は図書室に行くのか──と思ったら、


 修平君、具合が悪くて寝てるのよ。


 と、帰ってすぐ平岸ママに言われた。今週末は図書室には行かなさそうだ。

 カッパには悪いけど、私は奈良崎に幸せになってもらいたい。あんなに優しくていい奴なのに。伊藤ちゃんは人のどこを見てるんだろう?

 そして、私はなんで高条勇気と付き合ってるんだろう?

 LINE来てたけど、返事する気がしない。結城さんのこととか、所長に会いに行こうかどうかとか、そんなことばかり考えてしまって、出された宿題にもなかなか手がつけられない。ていうか問題の意味もわからない。なんで数学はこんなに難しいんだろう?ヨギナミが帰ってきた時に聞きに行ったら、かなり長く丁寧に解説してくれたんだけど、やっぱりよくわからなかった。ヨギナミは逆に英語がさっぱりわかってなくて、カタカナの横文字すら変な読み方をする。どうして私達の頭はこんなに偏っているのだろう。日本社会は何でも平均的にできる人を求めてるのに。

 いや、何でも平均っていうのもなんか気持ち悪い。人間ほど個々に違う生き物って他にいないし、個性があるから人間なんじゃないか──とかまたどうでもいいことを考えてしまって、宿題が終わらない。補習終われなかったら留年しちゃう。この学校あと一年でなくなるのに。別な学校で留年とかになったら悲しすぎる。なんとかしないと。



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