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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年1月

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2017.1.21 土曜日 サキの日記

 どうしよう。高条に告られた!

 朝には殺そうと思ってたのに。


 前からずっとかわいいと思ってた。

 俺と付き合わない?


 と言われた。言われた時は「は?何?冗談?」って思ってたんだけど、高条は真面目に、前から私のことが気になっていて、教室でも気がつくと私の方を見ちゃってて──ということをけっこう長く語った。

 一番驚いたのは、私が断らなかったことだ。


 うん、いいよ。


 って言っちゃった!その瞬間、高条は、


 おおおおおっしゃああァァァァァ!!!


 と、奴らしくない情熱的な叫び声を上げた。ちなみに、場所はカフェを出た所だった。札幌から帰ってきた後みんなでカフェに行こうとしたら、なぜかあかねと修平が一緒に仲良く先に帰ってしまった。きっと高条に協力したに違いない。

 どうしよう。

 今や高条は私の彼氏で、私は高条の彼女なのだ。

 わからない。なんで断らなかったんだろう?高条はヘンな奴だし、人を勝手に動画に撮るし──。


 畠山もそうだった。


 一瞬、思い出して心が止まった。でもまたすぐに落ち着かなくなってきた。どうしよう。人生で彼氏(まともな?)ができたのは初めてだ。でも私本当に高条のことが好きなわけじゃないのに。いや、嫌いでもないけど。

 私は混乱している。気がついたら研究所への道を走っていた。なぜか所長に知らせなきゃいけないような気がした。入ろうとしたら玄関に鍵がかかっていたので合鍵で開けて(なんか変な感じがした)、中に入ったら、所長はかま猫に何か話しかけていた。


 どうしたの?何かあったの?


 高条に告白されました!


 えっ?


 付き合うことになりましたっ!


 私はバカみたいに叫んだ。すると所長は、数秒止まってから、すとーんと落ちるようにソファーに座り、


 若いんだなあ。そんなことあるんだ。


 とつぶやいた。私はまだパニクっていたので、そうなったいきさつとか札幌行った話とかめちゃめちゃな内容の話をし続けた。そんなわけわかんない話を、所長は黙って聞いてくれた。

 考えがまとまらないうちに夕食の時間になって、あかねがやってきた。今日は怒鳴らず、ニヤニヤ笑いながら、


 そろそろ帰ってじ〜っくり話を伺いましょうか。

 ウフフ。


 と。やばい、からかわれまくりそうと思った。そのとおりだった。話はもう平岸家の全員に伝わっていた!ヨギナミにも『おめでとう』と言われたし。夕食の席で私は全員から質問攻めにあい、『式は!?式はいつなの!?』の平岸ママにまでからかわれた。もはや私が高条と付き合うのは確定。だって私がいいって言ったんだから。

 私、自分が何考えてるかさっぱりわからない。

 それに、高条は大事なことを言ってない。

 私と付き合いたいとは行ったけど、好きだとは言ってない。それって大事なことではないんだろうか。今度会ったら聞いてみる。いや、会うの?いつ会うの?月曜に学校始まるからその時でいいか。

 やばい、学校でも広まってみんなに祝われる!

 秘密にしとこうと今頃言ったってもう遅い。

 現に佐加から、


 彼氏できたんだっておめでと〜!


 というLINEが来てる(ヨギナミかあかねが言いふらしてるな)。

 隣の部屋からはギターの音が聴こえて、『うるさい!』と壁を叩いたら止まった。今日、札幌で楽器店を見て、カッパはギターを買っていた。その時には、私はピアノの楽譜を見ながら結城さんのことを考えていたし、朝に高条から昨日の橋本と杉浦のケンカ動画を見せられて、橋本を殺そうか(どうしていつも殺したい奴に限ってもう死んでるんだ!?)、杉浦を殺そうか、それともこんな動画を平気で撮影する高条を殺そうかと思い悩んでいたというのに。まさか暗殺リストに載った男子とお付き合いするハメになるとは!


 そうだ、結城さん。

 私が好きなのは結城さんではなかったのか?


 いや、でも、結城さんは私のことを無視するし、奈々子とか他のことで頭いっぱいだし、もう諦めた方がいいかな。これはそのいいきっかけになのかな。

 今日ずっと落ち着かない。たぶん今夜眠れない。今コーヒーをいれてしまった。久しぶりだ夜に飲むの。飲んだら余計に眠れない。高条は今何してんだろう?やっぱり眠れないのかな。今何してるの?ってLINEしそうになって、いかにも彼女っぽいなと思ってやめた。

 そうだ、私は彼女なんだ、高条の。

 うわぁ、どうしよう?




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