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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年12月

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2016.12.8 木曜日 サキの日記

 朝ごはんにヨギナミがいた。あかねの姿はなかった。昨日の夕食の時と同じだ。あかねはなぜそんなにヨギナミが嫌なんだろう。今まで昼休みは一緒にお弁当食べてたのに。

 ヨギナミは普段から料理をしているので、平岸ママの手伝いも手際よくやる。もしかしたらあかねはそれが嫌なのかもしれない。私もちょっと引け目を感じる。ヨギナミは、家事も仕事もできる女なのだ。ある意味学校の優等生よりすごい。なのになんで杉浦なんかが好きなんだろう?(と、クラスのほぼ全員が思っているはずだ)

 ヨギナミと一緒に学校へ行った。林の道の前で立ち止まって研究所の方を見ていたので、どうしたのと聞いたら、ううん別にとだけ言った。何か気になることでもあるんだろうか。

 学校では杉浦が、ジェイン・オースティンは世界的に愛されている作家で、何人かの男性に求婚されたけど断って独身を貫いて何とかかんとかと休み時間中ずっとしゃべっていてめっちゃウザかった。『高慢と偏見』は、キーラ・ナイトレイが出ている『プライドと偏見』という映画が美しくて良いと、カントクと一緒に見たことがある。あの映画は好きだ。他の作品読んでみようかなとも思ったけど、杉浦に乗せられるのは嫌なので、しばらくやめておくことにする。

 そろそろ研究所行こうかな。

 所長はどうしているだろう。

 今日は佐加がヨギナミの新しい部屋を見に来ていた。勝手に自分の好きなアーティストのポスターやカードを壁に貼ったりして、ヨギナミは引き気味だった。テイラー・スウィフトの真っ赤な唇を眺めていたら、佐加が、


 隣カッパでしょ?おい!カッパ!


 とか言いながら壁を叩き始めた。『うっせーよ!』という声と共に、壁を叩き返す音がした。

 

 隣男子ってやばくね?クヒヒ。


 佐加はいやらしい笑い方をしていたが、男子って言ってもカッパだし。

 部屋を一通り片付けたりデコったりしてから、平岸家に移動してチョコレートプディングをみんなで食べた。クリスマスの試作品。ここでもあかねは姿を見せなかった。


 あの子は何をすねてんのかしらね。


 平岸ママがつぶやいていた。


 せっかくクローゼットあるんだから服買おうよ〜!

 ヨギナミもっとおしゃれしなきゃさ〜!

 カーラ・デルヴィーニュの写真も貼る?気合入るよ?


 佐加はヨギナミよりもはりきっていた。


 お金ないって。


 ヨギナミはやはり引き気味。


 とりあえず部屋もっとデコろう。

 あ、そうだ、カーテン変えね?

 もっと明るい色にしたほうがいいと思うんだよね〜。

 うちに布あるかな〜?


 佐加はヨギナミの部屋を自分色にデコる気だ。放っといていいんだろうか。ヨギナミも文句言わないで黙って笑ってるし。佐加の行動を見ているのが面白いのか、止めても無駄だと思っているのか。たぶんそれだ。

 佐加は夕食まで平岸家にいて、部屋のデコ案についてものすごい勢いでしゃべったあと、迎えに来た父親の車で帰っていった。あかねは全く姿を現さなかった。部屋に戻ってからLINEしたけどスルーされたし。

 私は自分の部屋を見回した。床にはいろんなものが散らかってるけど、壁には、平岸パパがもらってきた幸福商会のカレンダー以外何もない。真っ白だ。私もなんか貼ろうかなと思ったけど、佐加と違ってビジュアル的に好きなアーティストやモデルはいない。作家の写真を貼るのもなんか違うと思う。シェイクスピアが好きなカントクでさえ、本は持ってても肖像を飾ったりはしていない(たぶん)。

 壁は白いままにしておくことにした。リオは、マリリン・モンローが新聞を読んでいる写真を持っていると言っていた。私は思考に他人を入れずに空白にしておきたい。

 なのに、結城さんのことを思い出してしまった。

 明日研究所行こうかな。でも『しばらく行かない』って言っちゃったから、もう行くのは早すぎると思う。

 明日何しようかな。

 またヨギナミの部屋デコるの手伝うことになるのかな。





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