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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年9月

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2016.9.29 木曜日 サキの日記 修学旅行4日目 博多

 修学旅行で初島に会う。

 最悪だ。


 私達だけ太宰府に行けなかった。

 しかも、恐ろしい夢を見た。

 夢の中で、私は奈々子さんで、

 創成川の近くで、初島に追い回されて、

 最後には捕まってしまった。

 そこで、彼女の記憶は途切れていた。


 目を覚ますと、博多のホテルにいた。

 私はパジャマに着替えさせられていた。南先生が部屋にいた。天神に行く途中で倒れたと言われた。すぐ高条とあかねが来た。私はとても動揺していたので、奈々子さんが殺された話を2人にしてしまった。高条は松井マスターや所長、保坂や修平から聞いた話で、既にいろんなことを知っていた。


 ちょっと!あたしだけ知らなかったってこと!?

 何で話してくれないのよ!?


 あかねがめっちゃ怒った。私はびっくりした。こういうことに興味を持つようには見えなかったから。


 あんたといい高谷といい、本当にムカつく!

 配慮しなきゃいけないことがあるなら、最初から言えばいいじゃない!なのに他のグループには話してあたし達は無視ってわけ?それじゃあたし達、何をしていいかわからないじゃない!

 ちょっと高条、高谷を呼んで来なさいよ。あいつにも怒鳴りつけないとあたしの気が済まない。


 高条は言われてスマホを操作して、『今来るって』と言った。

 私は気づいた。昔から仲良しで気持ちが通じてる他のグループと違って、第3は『言わなきゃわからない人達』の集まりだと。もっといろいろ話しておくべきだったのに、他のグループの様子に流されて、言わなくてもわかると思い込んでしまっていた。

 それは間違いだったのだ。

 もっと話すべきだったのだ。

 私は少し一人にしてほしいと頼んだ。高条とあかねは出ていったけど、南先生は残っていた。幽霊の話とか、きっと変な奴だと思われただろうなと思ったけど、先生は特に私には文句は言わず、


 倒れたときに制服が汚れたから、

 クリーニングに出しといた。


 と言って笑っていた。私はお礼を言ってから、佐加にもらったワンピースを着て、少し休んだ。佐加とヨギナミが帰って来たので一緒に夕食に行った。みんな心配して、何かしら言葉をかけたり、お土産を分けてくれたりした。優しさに泣きそうになった。

 修平の顔色が悪かったので声をかけたら、


 初島と話した。

 あとで内容送っとく。


 と言った。夜9時頃に来た。とんでもない内容だった。


 ()()()()()()必要としなくなれば、

 彼らは消えられる。


 どういうことかさっぱりわからない。なぜ私が奈々子さんを必要としなきゃいけないんだ?橋本だって所長には必要ないはずだ。向こうが生きるために私達を使っているのではないのか?

 ただ、修平は心当たりがあるらしい。


 俺、ずっと入院してて、話し相手がいなかったんだよ。


 と。それにしても、ずっと幽霊が必要なわけがないし。

 私の体から、殺された時の恐怖が抜けない。

 あれはただの夢じゃない。本当に起きたことだ。

 だから恐ろしい。

 眠れずにうだうだしてる私を見て、同室のヨギナミが、


 佐加の様子でも見に行く?


 と言った。佐加は今日あかねと同室だった。行ってみると、そこにはなぜか南先生もいた。


 みんなで大人の女の話聞こ〜!


 佐加が私達を見て言った。南先生からは、昔付き合っていた変な男の話を聞いてめっちゃ笑った。心配性で、あとをつけてきて電柱の影からそっとこちらを見ていたとか、下着の色にこだわりがありすぎて、一緒に買いに行ってひどい目にあったとか。


 パステルカラーじゃないとダメだって言うのよ?

 しかもそのパステル具合にも段階があって、これは優しいとか、これは優しくないとか、どういう区別してんのか、私には全然わかんないの。


 11時頃に、『そろそろ寝なきゃダメ』と言われて、自分の部屋に戻った。でもやっぱり眠れないので、ヨギナミと一緒に、所長や『おっさん』の話をした。ヨギナミは橋本のことを『お父さんぽい』と言っていて、なんだか危ないなと思った。ヨギナミは逆に、私と所長の関係の方が危ないと思っているようだ。


 本気で『好きです』って言われたら、サキ、どうする?


 と聞かれた。そんな場面は想像も出来なかった。

 所長にメールするの忘れたことに気づいたけど、夜遅かったし、心配されても困るのでやめておいた。でも、初島が現れたことは話さないといけないだろうな。

 互いが必要としなければ、幽霊は消えられる。

 でも、どうしたらいいんだろう。


 うっかり書き忘れる所だった。午前中、私達はまだ長崎にいて、平和公園でおばあちゃんが売るアイスを食べ、中華街では固い焼きそばをお土産に買い、昼に食べたちゃんぽんは極上の味がした。今まで食べていた『ちゃんぽんらしきもの』は、あれに比べたら偽物だ。それくらいおいしかった。

 別に出島に行っていた佐加によると、海で船の写真を撮っていたら、船員さんがこちらに向かって一斉に手を降ってくれて、めっちゃ盛り上がったらしい。


 九州の人、ホスピタリティすごくね!?


 とか言ってた。確かに、行く先々でいろんな人が明るく対応してくれた。それも、お店の店員とかじゃなくて、道にいるような普通の人が。

 そう。今日は本当はすごく楽しい日だったのだ。

 初島にさえ会わなければ、

 

 

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