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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年10月

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2015.10.15 サキの日記


 秋倉町の所長から、半円球の奇妙なロボットの写真が送られてきた。友達のプレゼントらしい。どういう友達なのか気になるし、ますます所長があの町で何をしているのかわからなくなってきた。

 助手と相性が悪くて、よくケンカしてるから見てて面白いらしい。もしかして、田舎で暮らしてる所長が寂しそうだから送っちゃったとか?白衣の人にロボが合うからとか?そういえば所長の白衣ってなんか意味あるんだろうか。

 謎は増えるばかり。



 こないだうっかりスマホで学校の見たら、『あいつとうとう頭狂って田舎に島流しだってケラケラ』と書いてあった。たぶん私のことだと思う。そのあとにも心を腐らせるような腐敗臭漂う悪口がズラリ。食べたばかりの唐揚げを吐きそうになった。

 こんなのと一緒にいるよりは確かに島流しのほうがマシかもしれないと思い直し、戻すのは逃れた。でもまたコーヒーを飲みまくったので眠れない。




 しばらくネット自体やめようと思ったけど暇だから、知り合いや書き込みを見る心配のないゲームとか本とかオークションとかそんなのばっか見て、結果、衝動買いした雑貨や本で部屋は散らかり、私の人生の根本的な問題は解決されてない。

 母の付き人が駅弁をもって来たけど、昔から説教ばかりするやな奴なのですぐ追い出した。しかも弁当の中身は平らなサーモンピンクの平面。ます鮨だった。嫌いじゃないけど何かが違う気がする。そういえば、母が今どこで仕事してるか私は知らない。今、日本で、母親がどこにいるか知らない人ってどれくらいいるんだろう?離婚とか失踪は除いて。

 母が私に興味がないわけじゃないのはよく知ってる。だって娘がLINEやめたくらいでめちゃめちゃ機嫌悪くなって現場が大変だった(とあとで聞いた)し、学校には来たし。

 でもなんか、違うのだ。

 よその母親とかいうのとは。

 バカとは高校が同じだったから出会ったそうだけど、いまいちあの母が何を思ってあのバカを選んだのかがわからない。二宮のお祖母ちゃんと母が仲が悪くて、私たちとはほぼ音信不通だから、もしかしたら家を出たかっただけだったのかなとか思うこともある。


 わざわざ書くまでもないが、私が父を『バカ』と呼ぶのは、奴がそういうキャラで仕事をしてるからであって、ほんとにバカにしてるわけじゃない(厳密に言うと嘘だけど)そういうことのわかってない人に説教されると私の家の安定が大きく揺らぐ。

 何にだって、当事者にしかわからない事情がある。


 お手伝いロボットが助手をホウキでボコボコにしたのも、きっと何か理由があるに違いない……みたいなことを所長に返信したら、


 あいつがイヤミだからだよ。

 イヤミを感知するくらい知能が高いんだ。


 という返信が来た、すぐに。

 悪口を理解できないくらい知能が低い方が、幸せかもね……と返信したら、またすぐに来た。



 それじゃ本が読めないよ!!



 悪口を関知せずに、

 本を読む知能を保てないだろうか。


 私は今、かなり真面目にそれを考えている。






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