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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年10月

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2015.10.14 サキの日記


 所長は、あのカウンター窓の外を見ながら過ごすことが多いらしい。あくまで雲の形や草木を観察しているのに、なぜかぼんやりしてる、空想してると勘違いされるとか。

 言葉の言い回しで『窓の外を見る』は、授業が退屈……いや、遠くを空想するイメージがあるからだろう。実際に窓の外を見る理由は色々。変な趣味の学生がまわりにいないか常にチェックしている助手とか、外出したいけど傘を持ちたくないから、窓の外の空模様を甘く見てた私とか。

 そういうときに限って、予報は晴れでもにわか雨に当たる。傘はまた一本増える。こういうささいなことで簡単に気が滅入ってしまう。


 だけど、今日は久々に真面目に勉強はした。学校は嫌だけど、予備校か塾の短期講習は受けようかな。でもまた人に会うの嫌だな。同年代の、LINEやってないの?という質問も嫌だし、学校どこって言われると、どう答えていいかわからない。



 カントクから様子を探る電話があったので、秋倉町で雪が降ってるらしいと話したら、

『それ、ほんとに大丈夫な人なの?女の子が友達だと思ってても、男の子は巧妙なケダモノだったりするのヨ』

 と心配されてしまった。男子がケダモノなのは私だって学校で学んでよく知ってる。でも、普段偏見とは反対側にいるようなカントクにそんなことを言われるのは残念。心配してるだけだとわかってはいるけど。


 札幌にいるバカからは、1日10通以上メールが来てる。

 タイトルがみんな『パパピョーン』だから、未読スルーしてるけど。

 所長とも1日おきにやりとりしてる感じ。ウザいと思われてないといいなと思いつつ、なんか、向こうも同じ心配してそうな気が物凄くする。すごく人に気を使って、疲れてそう。学校の私みたいに。

 所長は私が知ってる大人の中で一番静かで、小柄で、唯一酒を飲まない。



 なんでこんなに気になるんだろう。



 私は今、窓の外をレースのカーテンごしに見ている。

 観察するものはマンションと空くらい。

 こっちの空は狭いって言い回しがあるけど、私はそうは感じてない。

 海が見えないからって、海が狭いと言う人はいない。

 なぜだろう。



 疑問は増えていく。




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