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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年7月

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2016.7.16 土曜日 サキの日記

 学校祭の準備期間に入り、土日も学校。

 佐加が廊下を走り回る。折り紙で作った長い鎖を大量に持って。通りがかった先輩たちが『危ねーぞ佐加!』と叫ぶ。軽い寸劇を披露するという先輩のグループが、チラシを配りに来た。『秋倉サイコホラー』という文字がおどろおどしい。高条と杉浦は佐加を完全に無視し、教室から『かわいい』を完全に排除して、レトロなカフェスペースに改装中。ピンクのクマは教室の入り口に放置。

 私とヨギナミは、校門に出す大看板の制作を手伝っていた。真ん中の文字は書道が得意な藤木が書き、大きな『学校祭』の文字のまわりに、紙の花を大量にボンドで貼った。廊下には、佐加が作りまくった折り紙の鎖や手裏剣や鶴が、そこらじゅうに貼られている。保坂とスマコンは音楽室で、当日披露する変な曲の練習をしていた。伊藤ちゃんと奈良崎はたこ焼きを大量に試作し、みんなでお昼ごはんに食べた。

 あかねは来なかった。

 朝食の時もいなかった。

 去年も準備期間は来なかったと、伊藤ちゃんが教えてくれた。当日には来たけど、遊びに来た平岸パパに怒鳴り散らしていたという。


 たぶん今年も怒鳴るから、驚かないほうがいいよ。


 伊藤ちゃんはそう言った。それから『所長さんに渡せば?』と、学校祭のプログラムを余分にくれた。

 修平はテーブル(いつもの机の集合体)の位置をやたらに移動して、あっちでもない、ここでもない、入り口に近すぎるのもどうかな〜とひとり言をつぶやきまくっていた。昨日壁から生えてきたあの眼鏡のおじさんの姿は見えない。保坂と藤木が、たこ焼き屋とレストランの位置関係を話し合っているのを見てたら眠くなってきた。昨日はほとんど寝てないと言ったら、


 じゃ〜、ここの椅子使っていいから寝てなよ。


 と、奈良崎が椅子を5個並べてくれたので試しに横になってみたが、固くて眠れない。


 3時頃に解散したので研究所に行ったら、結城さんがまたピアノを弾いていて、所長は既に逃げ出した後だった。少しだけピアノを聴いて、きのう聞いた奈々子さんの話を思い出した。

 結城さん、彼女が好きだったんだろうか。

 だから、所長を探し出したんだろうか。

 前に『もう金の問題じゃない』と言っていたのも、そのことだったんだろうか。

 何だかわからないピアノ曲を聴いていたら、気持ちが沈んできた。泣きそうになってきたので帰ることにした。



 あかねは夕食にも現れなかった。


 何が気に入らないんだろうね、あいつ。


 と、修平は不思議そうにしていた。

 私は平岸ママに勧められて、あかねの分のトンテキも食べ、部屋に戻って本をめくりながら、また結城さんのことを考えた。そういえば、学校祭のプログラムを所長に渡すの忘れてた。明日行って、来てもらえるように頼まないと。でも、人が多いから嫌がるかな。




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