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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年10月

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2015.10.7 サキの日記


 昼過ぎに起きた。

 やることがない。本にも集中できないし、やたらにスマホを手に取るけど、何度見たところで特に変化はないし、ニュースには相変わらず殺人だの事故だの噂だの、不快なことが並んでる。

 私が学校でやられた嫌がらせとかのせいで、そういうニュースが前以上に心に刺さるようになった。 この国では、みんな面白半分で、人を平気で傷つける。やった方は面白半分でも、被害者は社会に居場所をなくすかもしれない。



 何にも集中できない。

 暇をもて甘し、しまいにはバカの部屋に行き、古いゲームを引っ張り出して遊んだ。バカは高校時代にファミコンが出始めた世代で、ゲームならほぼ何でも好きだ。格闘ゲームをネタにしたコントも作ってたし、初期のドラクエやファイナルファンタジーを今でもやってる(復刻版アプリで)マップが平面で、キャラが四角い三頭身。

 そこで思い出した。娘どころか、溺愛する妻(バカは愛妻家として有名だ。『おはピョーン』『バカピョーン』というメール攻撃に迷惑しているのは私だけではない)にも触らせないカセットケースのことを。

 今まで古いゲームに興味がなかった(ゲームはスマホになったから)けど、そーっと、古めかしい灰色のプラスチックケースを棚から出し、開けてみた。

 小学校のクレヨンや絵の具を連想させる色の四角いものが、ぎっしりと詰まっていた。

 ドラクエ3本。さんまの名探偵、FF。ボコスカウォーズ

 なぜかドラクエ3だけ『触るな』と、本体に黒いペンで書いてある。攻略を書いたらしきメモも張り付けてある。

 怪しい。

 ファミコンの本体はどこかにあるだろうか。部屋の中をあさったけど見つからない。マンションじゅうの収納をひっくり返したら、なんと、母がクローゼット代わりにしてる部屋のさらに壁際の扉の中にあった。ここ、あとで中身をじっくり調べたほうがいいかもしれない。

 30年は前ので、しかもコントローラーが黒ずんでめっちゃ汚い。でも動いた。ただ、パスワードみたいのを要求されるソフトはデータが読み込めない。ドラクエ3にセーブデータがあった。

 ロードしたら全員レベル99で、みんな『しあわせのくつ』を履いていた。勇者しんばし、戦士にのみや(母が戦士?)賢者ひらぎし(平岸パパ?)賢者すぎうら。


 すぎうらは確か、高校の友達だと思う。


 データ消して最初からやろうと思ったけど、このソフトだけはまずいかもと思ったので、別なやつにした。最初は面白かったけど、すぐレベル上げがめんどくさくなって、やめた。

 レベル99って。

 そんなにゲームばかりやってたからあんなバカキャラになったのか。


 Wiiで敵をボコボコに殴り、ほどよく疲れたので、そのあとしばらく部屋で寝てた。

 半端な時間に寝たせいで夜中に起きた。これは朝まで眠れないだろうと思って、コーヒーを入れながらぼんやりしていたら、母のクローゼットを思い出した。

 誰もいないのに、そーっと、中に入り、扉を開けた。白いシャツ、デニムのワンピース……うちで着ているのを見たことがある服ばかりだった。しかもみんな、高いものじゃない。イオンで買ったのまで混じってる。

 普段着をわざわざ扉の中にしまっているんだろうか。

 私の後ろには、高い服がむき出しのままハンガーにかけられてずらっと並べられ、放置されている。

服の下に箱があった。中身は卒業アルバム。高校のと、中学のだ。高校のには、バカと、母と、荒井カントク、平岸パパまで載っていた。まだ髪がふさふさだ。バカは当時細身で、目付きの悪い不良のような顔をしていたようだ。今は豚まんじゅうみたいなおじさんになっているが。

 スギウラという名前を探したけど、見つからなかった。高校は別だったのだろうか。

 中学のほうは、母しか載っていない……と思ったら、カントクがいた。中学からあの口調だったのだろうか。

 クラス写真に、別窓でバカに似た顔が載っていたが、名前は聞いたことがない別人だった。似た顔の誰かがこの日は休みだったのだろう。


 そのあとも扉の中をあさったけど、古い服と、引き出しに旅行のお土産みたいな小物がごちゃごちゃと入っているのを見つけただけだった。

 服の山には興味がもてないので部屋に戻ってまた寝た。


 また変な夢見た。

 制服の女の子が川沿いを歩いてる。夜みたいで、誰かに会いに行くようだ。

 遠くのフェンス沿いに誰かいるのが見えたところで目が覚めた。


 あれは誰なんだろう……。


 ゲームの登場人物かもしれない。

 でもそんなゲームあったっけ?




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