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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年6月

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2016.6.2 木曜日 サキの日記

 昨日は熱を出して学校を休んだ。カッパの風邪をうつされた。ごめんね〜と言いながら私の部屋に入ろうとしたので、英和辞典をぶん投げて追い払った。食事は平岸ママが3食きちんと運んでくれるし、熱さえなければ贅沢な一日だったと言えなくもない。本も少し読んだけど、さすがに具合が悪いので、一冊読み切るのは無理だった。

 今日になって熱は下がり、少しだるいと思いながら学校へ行った。風邪はクラスで広まったらしく、保坂とスマコン、ヨギナミが欠席。ただでさえ人数の少ないクラスに、よけいに空席ができて寂しい感じ。佐加は『スマコンと保坂が一緒に休んでるのあやしくね?』と言っていた。ヨギナミのお見舞いに行きたいけど、メールで『うつるから来るな』と言われてがっかりしたらしい。


 帰りに研究所に行ったら、所長は私を見るなり、


 あいつ怪しいよ。

 絶対何か知ってたんだ!


 と言い出した。何のことだかわからないので、いつものカウンター席に座らせて話を聞いた。

 なんと、この前電話をかけてきた結城さんの友達が、バンド、フェザーザップの高谷修二だったという。


 絶対、会ったことがあるんだ。

 もしかしたらあいつ、僕のこと修二から聞いて前から知ってたんじゃないかな。そんな気がする。本人には否定されたけど。


 結城さんはまた出かけてしまったらしい。残念。

 前に見たフェザーザップのポスターを思い出したので、控えめに口にしてみたら、見に来てもいいと言ってくれた。一緒に二階の所長の寝室に行った。

 壁にはやっぱり、フェザーザップのポスターがあった。

 真ん中にいる、若い高谷修二。髪が金色に近い色で、そこだけ結城さんに似てる。だけど、他の印象が全然違う。

 修二は、真面目な人だと思う。

 当時の常識からははずれた格好をしていても、この人は物事に真剣そうだと思わせる顔をしている。そしてやっぱり、知っている人のような気がする。

 一階に戻って、もう15年以上は前のフェザーザップのCDを聞きながらコーヒーを飲んでいたら、カッパが高谷修二の息子だということを思い出した。全然似てない。奴は顔からして冗談みたいだ。一応所長にその話をしたら、『ええっ!?』と珍しく大声で驚かれた。


 なんで修二の関係者が僕のまわりに集まってるの?

 怖いんだけど。


 言われて気づいた。なんで高谷はこの町に来たんだろう?体が弱いなら、東京近郊にいくらでも療養する場所はあるし、自然の多い保養地だって関東にはたくさんあるのに。秋倉には、小さな診療所があるだけだ。

 怪しい。

 高谷を尋問してみます、と所長に約束して、やる気満々で平岸家に帰ったら『また熱出して寝てる』と言われてしまった。タイミング良すぎて仮病としか思えない。

 平岸パパに、なぜ高谷がここに来たのか聞いてみた。


 それは本人に聞かないとわからないなあ。ここに来る子は、親から離れたいとか自立したいとか、そういうのが多いなあ。


 遠巻きにはぐらかされた感じがする。

 私は久しぶりに自分の親を思い出した。バカピョンからは毎日メールが来てるけど、そういえば最近母から連絡がない。ニュースになってないから死んではいないと思うけど。バカに聞いてみようかなと思ったら、


 横暴な両親から逃げるために田舎の学生寮に来た少年が、森の中で謎の美青年に会って快楽に目覚めるの。だけど他の少年たちが嫉妬して、めくるめく官能の幕が上がるのよ……ウフフフフ。


 ハードな妄想を横から発せられたので、早めにご飯を食べて逃げてきた。

 怖い。

 あかねの次回作が怖すぎる!




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