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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年10月

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2015.10.2 サキの日記


 昨日の朝というか、昼。


 コーヒーを入れようと思ったら微かに悪臭を感じた。排水口かも思って、シンク下の扉を開けたら、やっぱり臭い。パイプ用の洗浄液があったので思い切り流し込んだら、今度はその塩素臭いので気分が悪くなり、部屋に戻って寝た。


 次に目を覚ましたとき、開けっぱなしのドアから水の流れる音がした。そして、うちのバカがそーっと部屋を覗いていた。


 何時間ほっといたのよ。


 洗浄液の事だとわかるのに数分かかった。本当は、30分くらい経ったら水で流さないといけなかったらしい。時計を見たらもう夜だった。

 起き上がる気はしなかった。バカが最近の調子はどうだとか、どこかに出かけたかとやたらに質問しに来るので、しまいには物を投げて叩き出した。


 今日の朝、やたらにバタバタと動き回るバカの足音で目が覚めた。


 ダイニングテーブルに、ご飯と味噌汁、なぜかれんこんの漬け物。九州のおみやげだという。



 明日から札幌公演だけど、サキも来るか?じいさんのとこに泊まればいいし。



 気力がないし、人に会いたくなかったので断った。でも、秋倉のことを思い出したので、最近来た所長のメールの話をした。ヨギナミのグループの子たちが食糧庫に忍び込んで、怖い助手に捕まったとか。



 そんなにあの町は面白いかい。



 バカがしんみりした顔をした。本当は娘を劇団と一緒につれ回したかったのだろう。



 じゃあ一緒に来て、秋倉にも遊びに行けばいいよ。



 迷ったけど、やっぱり断った。

 あかねは学校だろうし、所長の所にも助手がいる。



 バカは出掛ける前に、掃除の業者を呼んだから、人に会うのが嫌なら今日の午後は出かけろと言い、私が文句を言う前にドアを閉め、マンションの廊下を音をたてて勢いよく走っていった。朝から近所迷惑だ。



 母からは何の連絡もない。学校を辞めたいと言ったときにわざわざ来てくれたのは、本当に不思議だ。でもあの『学校は嫌い』発言以来、メールも電話もない。LINEを止めたときに、母らしくない感情的な抗議の電話があったから、まだスネているのかもしれない。



 何日も寝てたから自分が臭かった。シャワーを浴びて、着るものを選ぶのもめんどくさかったので、行かないと決めたはずの制服を着て外に出た。天気は……微妙。気分のいいときなら気にならないのだろうけど、歩いている人の視線とか、どこからか聞こえてくるよその家の生活音がすごく気にさわる。


 地下鉄にも電車にも乗りたくなかったので、けっこう離れた公園まで歩くことにした。




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