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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年9月

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2015.9.30 サキの日記


 Google先生に聞くと、世の中のありとあらゆることを教えてくれる。アイテムやお店の場所ならほぼ確実、知らない人の悩みや地球の裏の愚痴までも伝わる。

 でも、そこに私の知りたいことは載ってない。

 私自身の情報がそこにないから。

 似たような誰かの体験はあって、一応参考にはなるけれど。




 夢占いから心理学の本、スマホで見た質問箱、とにかくどこを調べても、夢に出てくる2人が誰なのか、何なのかわからない。

 母やバカにも何度も聞いたけど、そういう知り合いには心当たりがないそうだ。

 私だって自分で会った記憶なんてない。

 やっぱ学校から逃げてるから見る幻想?


 不思議と言えば、所長の部屋にあったフェザーザップのポスター。

 父は真ん中の彼に会ったことがあるそうだ。仕事中足を折ったことがあるのだが、なぜか同じ病院にいたらしい。バカなので『俺のお見舞いに来たピョーン!』と言い張っているが、たぶん100%違う。相手にとっては痛い偶然に違いない。


 私は会ったことがないはずだ。


 所長に聞きたいけど、勝手に部屋に入ったのがバレそうだからまだ聞いてない。


 秋倉のあかねからは『二人はラブラブ』という妄想メールが届いた。所長と助手が仲良く話しているのを見ただけで。


 ちょっと話しただけでラブラブになれる人間ばかりだったら、世の中はましになるだろうか。

 たぶんならない。


 私がこれからどう生きたらいいか、

 そのヒントは、スマホの中にも本の中にもたくさんあるけど、

 答えそのものはまだ、見つかっていない。


 学校を本格的にやめた訳じゃないけど、

『どこにも属していない状態』

 を、物心ついてから初めて体験して、それは思ったよりずっと空っぽで、心もとなくて、落ち着かないのだった。


 やることがないのは良くない。だから一応、デイケアのプログラムの日とか、気力のある時は行くようにはしてる。

 今日は暇だ。

 所長には短いメールだけ送って、私は何かを探しに外に出た。雨が降っていた。途中で学習塾の前を通った。私が通ってたのとは別のところだ。

 何とか大学の合格率とか、そういう華々しい数字が、なんだかすごく非現実の、遠い世界の事柄に思える。

 雨と風が急に強くなったので、手近のカフェに入った。雑誌や本棚がある素敵な所だったのに、せっかく置いてある珍しい本を、読む気になれなかった。

 何がが心を焦らせていて、せっかくいいものが目の前にあっても集中がきかない。残念だけど、これは私の人生にはよくあることだった。

 結局帰って、ふて寝。

 すごく無駄に過ごしてる気がする。




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