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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年5月

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2016.5.3 火曜日 ヨギナミの家


 私はこんなに食べられないからどうぞ。洋子はいつも作りすぎるのよね。


 与儀あさみが客に向かって、友人が作った弁当を押し付けた。


 いい友達だな。大人になったら飯作ってくれる人なんてなかなか見つかるもんじゃないだろ。女は特に。


 小さなおっさんが来ていた。遠慮なく弁当を半分以上平らげた後、


 奈美はバイトか?休みの日なのに友達と遊べないのか?


 と言った。あさみは黙っていた。ほかの人に言われていたら責められたと感じただろう。

 

 最近あんまり来ないのね。

 

 創が他の友達と仲良くしてるからな。本当は創のものだからな、これ。

 

 おっさんが自分の胸元を手で叩いた。この体は別な人間の物、という意味だ。あさみは特に否定もせず、肯定もせず、曖昧な視線を返した。見た目は若い。話し方は同年代か、もっと上だ。

 

 ここから出て行く方法を探しても、見つからねえんだ。

 

 出て行く方法がわかったらどうなるの?

 

 俺はいなくなって、この体は創のものに戻る。いや、今でも創のものなんだ。本当は俺が出てきちゃいけない。

 

 なら何で出てくるの?

 

 わからねえんだよ。どうしても出てきちまう。

 

 言葉はそこで途切れた。あさみがおっさんの顔に手を伸ばして髪に触れた。

 

 若いわね。

 

 創は若いよ。

 

 あさみとおっさんはしばらくそのままの姿勢で見つめあっていた。立場は違えど、どちらも理不尽な状況にいる。そんなもの同士が、なぜか、どこかで繋がった。他人の物を借りているから、これ以上のことはできないが。



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