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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年5月

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2016.5.2 月曜日 サキの日記

 浮かない気分。空も曇り。ヨギナミに所長のことを聞いてみたいけどなんとなく聞きづらい。佐加はバイトの求人を熱心に見ていたけど、札幌ばっかじゃんと言って途中でやめて、ノートに服のデザインらしき絵を描いていた。パソコンほしーと言いながら。高谷は保坂たちと動画サイトの話をしていた。高条は杉浦にからまれて谷崎潤一郎の話を延々と聞かされていた。先生に『今月の日誌描くの忘れないでね』と言われ、それを聞いた佐加が、


 サキ日誌書いてないの?うちなんか思いついたらすぐ送ってんのに。


 先生は友達じゃないだろうと思ったけど、佐加にとってはパチンコの仲良しおじさんと同じ感覚なんだろうか。

 迷ったけど帰りに研究所に行ってみた。所長はいつものようにパソコンに向かっていた。怒ってはいないようだけど元気もなさそうだった。連休中の予定を聞いたら、


 特にないよ。桜を見に山に行くくらいかな。


 と言ったので、一緒に行く約束をした。町にも花見スポットがあるけどそちらは人が多くなるから近づけないと言う。平岸家でも花見をすると言っていたからたぶん私はそっちにも行くことになるんだろう。


 春は物悲しい季節だよ。


 所長は窓の外を見ながらつぶやいた。春に出てくる変質者みたいなうきうきする要素は、所長の春にはないらしい。


 何もかもが生命力にあふれてる。これからすべてが始まる。でも僕はどちらかというともう終わりかけている気がする。取り残されていくような感じがするんだよ、大人になるとね。


 私にはよくわからなかった。所長は確かに大人だけどそんなに歳いってないし。一体何が起きたらそういうことになるんだろう?所長は何に取り残されたのか?

 平岸家に帰ったら平岸夫妻が二人そろって『それ、わかる』と言い、やはり『歳を取らないとわからないのよ』と言い、そのあと『久方さんはそんな歳じゃないよね?』とみんな揃って言った。所長の謎がまた一つ増えた。



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