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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年4月

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2016.4.28 木曜日 サキの日記

 夜中に、隣に誰かが立っているような気がして目覚めたけれど、もちろん誰もいなかった。すぐ寝直して、朝は雲のどんより感と、昨日から続くだるさで本当に学校休もうかと思った。しかも傘持ってないのに昼から雨。学校に置きっぱなしになっているビニール傘を借りた。

 所長は昨日起きたことを知りたがっていた。


 知らないオペラをイタリア語で歌っちゃって、しかも証人がいるんでしょう?すごい現象じゃない?


 所長もオペラ好きなの、前に聞いたことがあるような気がするけど忘れてた。『フィガロの結婚』のDVDを持っていると言われたので一緒に見たら、前にどこかで見たような気がした。特に恋に夢中になっている人が歌ってる歌。帰り道でうっかりメロディを口ずさんでしまって自分に驚いた。一回聞いただけで覚えるはずがない。前に見たことがあるんだ。でも、いつどこで見たのかが思い出せなかった。

 DVDを最後まで見たので帰りがぎりぎりになった。また夕食のとき修平に『また久方の所にいたの?』『何してたの?』としつこく聞かれた。正直にオペラのDVD一緒に見ただけだと答えた。そしたら高谷はなぜか黙って、そのあと一言もしゃべらずに帰った。

 あかねが帰り際に、


 フェザーザップって知ってる?


 と聞いてきたからびっくりした。所長の部屋のポスターの話かと思ったら、


 高谷って、そのバンドのボーカルの高谷修二の息子なのよ。選択で音楽取ったのも父親の影響じゃない?


 あのポスターの真ん中の、不思議な感じのする修二を思い出した。あの息子がよりによってカッパ?と思わず口に出してしまい、聞いていた平岸パパがワハハハハと大きな声で笑った。


 二人とも、あんまり言いふらすんじゃないよ、本人が言ってないんだろう?


 あかねは、『来た時にすぐ自己紹介で言っちゃえばよかったのに』と言いながら、私を見てニヤリと笑った。やばい、私もバカと妙子のことはクラスの人に話してないし、知られたくもない。『妙子の娘』とか呼ばれながら高校生活を送りたくない。

 あかねはそれ以上何も言わずにいなくなったけど、私は弱みを握られたような気がして、暗い気持ちで部屋に戻った。バカからはいつも通り『バカピョーン』『パパピョーン』なメッセージが大量に来てる。一応中身を見ると本当にくだらないことしか書いてない。『若手の女の子が俺に色目を使ったピョーン』気のせいだバーカ!



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