2016.4.27 サキの日記
音楽のテストで歌えと言われたところまでは覚えてる。でも、そのあと頭がぼんやりして、結局調子が戻らなくて学校は早退した。何も歌った記憶がないのに、ぼーっとして気が付いたら『素晴らしい!』って先生が手を叩いていて、杉浦からよくわかんない題名の歌を歌っていたと聞かされた。気が進まないけど修平に私何歌ったっけ?と聞いたら『なんかアリアってやつ』とまるで覚えられてなかった。杉浦に確認するとオペラ好きを刺激してしまいそうで怖い。きっと先に杉浦が異様に本格的な声でオペラっぽい曲を歌ったから、それが原因で頭がぼーっとしてるのかもしれない。ていうか、杉浦って何者なんだろう……?
所長に『歌った覚えがないけどいつのまにか歌ってたらしい』とメールで伝えたら、『心配だからそういうことがまたあったら教えて』と返信が来た。夕方、まだぼんやりするからと夕食を遠慮していたら、高谷がドアをノックして『食べたいものがあったら持ってくるから言えよ~』と言った。無視しちゃったけど意外と優しいんだなと思った。7時頃に平岸ママがおかゆと大根の漬物をお盆に載せて部屋に来た。どうしたら平岸ママみたいになれるんでしょうねとなんとなく聞いたら、
まあうれしい!あかねなんて『ママみたいな女には絶対になりたくない』って言うのに。
本当に嬉しそうに出て行った。単純なようだけど、大人の余裕も感じた。うちの40代の娘にはあまりそういうところがない。『ママみたいになりたくない』なんてうっかり口にしたらすごく傷ついて仕事に支障が出てマネージャーから私に文句が来そう。




