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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年4月

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2016.4.22 金曜日 サキの日記

 だるい。朝起きるのが辛かった。でも今日行けば明日は休みだ。

 

 佐加が高谷に所長のことをしつこく聞いていた。


 俺知らないから、新橋さんに聞いたほうが知ってるって。


 と高谷は逃げ回っていた。佐加は一体何がしたいのだろう?私には特に何も聞いてこない。お気に入りのダンス動画を見せに来ただけだ。ヨギナミは私や佐加がしゃべっているのをじーっと見ているだけ。横で杉浦が難しい小説の話をしていて、藤木が眠そうな顔で聞いていた。なんとなく話の感じで、小林秀雄と保坂和志じゃないかと思った。この二人の本は私には難しくて、わかるところは自分のことのようにわかるのに、わからないところは何が書いてあるかさっぱり理解できないと言う、不思議なところがある。

 図書室に行って伊藤ちゃんにジュンパ・ラヒリの短編集を勧められたけど、もう読んだことがある本だった。大学院とか医者とか高学歴の人が当たり前のように『普通の人』みたいに出て来て、7歳で円周率を学んでいないのはどうかなんて話まで出て来て、小説のテーマよりもその学力水準の高さというか、できて当たり前みたいな感じに驚いた記憶がある。学力とか学歴に関する意識が全然違うのだ。

 伊藤ちゃんにそんな話をしたら、


 学校は勉強するところじゃなくて、会社に通う訓練をするところなんだって。


 と言い出した。昔の本にそう書いてあるのを読んで、今でもそうだなと思ったらしい。

 勉強したい人は学校じゃなくて塾に行くんだって。

 伊藤ちゃんに塾に行ってるのかと聞いたら『アプリで』と答えた。図書カードのレトロさとは合ってない答えだけど、他の生徒より意識が高いんだと思った。佐加やあかねや他の人から『塾』とか『勉強に使うアプリ』が話題に出てきたことがなく、私もそのことに気づいていなかった。


 勉強とstudy、learnの意味も重さも違うんだよ。日本の勉強は小学生のおもちゃみたいに『お勉強』でしょ?『おままごと』みたいな語感じゃない?違うんだよ。本当は大人になっても続けなきゃいけない、人生にかかわる大事なことなんだよ。でもそれがなぜか日本だとバカにされちゃんだよ。お金稼ぐほうが大事みたいな感じで。


 ふと、伊藤ちゃんと所長に本について話してもらったらおもしろい対談になりそうだなと思った。


 怪しい人だとは思ってないけど、大人も男も苦手だからやめとく。


 本人に聞いたら断られた。大人っぽい伊藤ちゃんが大人は苦手というのが意外だ。



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